出版社内容情報
推古女帝の皇太子となった廐戸皇子は、実力者蘇我馬子大臣に圧迫されながらも着々と新しい倭国を築いていった。大河小説完結篇!
内容説明
皇太子廐戸皇子は、つぎつぎに新しい政策を打ち出した。斑鳩宮の造営、冠位十二階の制定、飛鳥寺の建立、遣隋使の派遣…。さすがは皇太子、と蘇我馬子は表面上感心してみせたが、その胸の底には廐戸を傀儡として操ろうという強烈な意志が潜んでいた。廐戸の野望と挫折を描いた古代史大河小説完結篇。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
さら
34
名前が長いので黙読するのにも時間がかかります(笑)。4巻目にしてようやく長い名前にも慣れた気がしました。 廐戸皇子が権力者の馬子とぶつからないよう上手く立ち回り、自分の理想とする政治を実現しようとする姿を書いた本巻。廐戸皇子が自分の妃達の嫉妬に手を焼く姿や、師と仰ぐ慧慈に助言を求めたりと人間らしい姿をみると、あの肖像画のイメージが少し崩れ、身近に感じられました。彼が大王(おおきみ)になり、彼の理想が実現されたならどんな世の中になっていったのかなぁと想像してしまいました。2017/11/15
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14
*聖徳太子4巻≪最終巻≫*推古天皇の皇太子となった廐戸皇子(聖徳太子)は、政敵、蘇我馬子大臣に圧迫されながらも、つぎつぎに新しい政策を打ち出した!…だが馬子は腹の内で、そんな廐戸を傀儡にする秘策のチャンスを淡々と伺っていた…。(紹介文・他より)――恐ろしや…蘇我馬子。そして、政争に敗れはしたが、傀儡にならず戦い抜けた廐戸皇子(聖徳太子)の堂々たる戦い振りが、実にお見事! ⇒続き 2014/04/01
紅香
12
厩戸の理想の前に良くも悪くも蘇我馬子が立ち憚る。自身も蘇我の血脈を持ち、一触即発な緊張感の中を懸命に生きた厩戸。後の世には呆気なく全て覆させられる。。氏族の利益よりも国家について論じる彼ら。いくら国家の体制が整っても悪い君主が出たなら政治は壊滅し、民は苦しむことを見越して政治の理念をまとめようとした厩戸。慧慈を筆頭に厩戸の周りの人物が魅力的。朝鮮三国、隋との外交での倭国の立ち位置が良く理解でき、国について考えさせられた。「え?5巻はないの?」5巻、6巻があってもおかしくないほど、後の経緯が気になった。2025/02/05
浦
12
聖徳太子が遣隋使を派遣した三十歳程度で一旦の終了。ここまでが希望に満ちた時代。最終章で、作者から晩年の凋落の可能性が語られる。自殺の可能性すらあるという。蘇我馬子と聖徳太子という、2つの巨星といっていい才能が鎬を削った時代だったが、蘇我氏・上宮王家とも、息子たちには能力はともかく、生まれながらの器は受け継がれなかった。それ故、両家とも全滅することになる。過ぎた天才を授かることは、長い目で見れば一族にとって危険なことでもあるのだ。2017/10/22
くっちゃ
9
教科書ってホント「日本書紀」の記述に傾倒していたんだな~と認識。中国などの文献から多角的に眺めることで見えてくる古代史の実像。例えば、隋への対外政策から一時的に厩戸が大王になり、その後馬子、蝦夷から疎外されて政治の場から撤退、推古天皇の重祚の可能性など。あと遣隋使は中国の進んだ文化を日本にもたらすだけでなく、裴世清を招くことにより客観的な当時の倭国の現状を伝えるのにも、一役かうことになった。2016/11/02