文春文庫
夜明けの雷鳴―医師・高松凌雲

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  • サイズ 文庫判/ページ数 359p/高さ 16cm
  • 商品コード 9784167169381
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0193

内容説明

慶応三年、万国博覧会に出席する徳川昭武の随行医として渡欧した三十一歳の医師・高松凌雲。パリの医学校「神の館」で神聖なる医学の精神を学んだ彼は、幕府瓦解後の日本に戻り、旧幕臣として箱館戦争に身を投じる―。壮絶な戦場において敵味方の区別なく治療を行った、博愛と義の人の生涯を描く歴史長篇。

著者等紹介

吉村昭[ヨシムラアキラ]
1927年、東京生まれ。学習院大学中退。66年「星への旅」で太宰治賞を受賞。同年「戦艦武蔵」で脚光を浴び、以降「零式戦闘機」「陸奥爆沈」「総員起シ」等を次々に発表。73年これら一連のドキュメンタリー作品の業績により第21回菊池寛賞を受賞する。他に「ふぉん・しいほるとの娘」で吉川英治文学賞(79年)、「破獄」により読売文学賞、芸術選奨文部大臣賞(84年)、「冷い夏、熱い夏」で毎日芸術賞(85年)、さらに87年日本芸術院賞、94年には「天狗争乱」で大仏次郎賞をそれぞれ受賞。97年より芸術院会員
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感想・レビュー

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ヴェネツィア

377
幕末から明治に生きた医師、高松凌雲の生の軌跡を基軸に、その激動の時代を描き出した歴史小説。凌雲の生涯および彼が成したことは、ほぼ史実通りであるようだ。ここでの吉村昭は、あくまでも静謐な中に語って行く。寒気の厳しい慶応2(1866)年の京の町の記述から始まって、大正5(1916)年10月凌雲は81歳の生を閉じた。「和傘や洋傘をさした会葬者が長い列をつくり、それは雨で白く煙っていた」ーこうしたトーンが全編に貫かれているのである。人は、世が危急存亡のまさにそうした時にこそ真の姿を見せるのだろうか。⇒2023/01/16

yoshida

115
幕末から明治に活躍した医師高松凌雲。その高潔で博愛に生きた波乱の生涯。徳川慶喜の弟である徳川昭武の随行医として凌雲はフランスに渡り西洋医学を学ぶ。江戸幕府の崩壊で急遽帰国した凌雲は、旧幕臣として箱館戦争に医師として参加する。官軍捕虜も旧幕軍も平等に治療する。更には官軍から患者を守る為に奔走すり。榎本武揚等、旧幕臣達への節度から新政府の出仕打診も断り民間医師として動く。医療は平等の理念により、困窮患者救済の為とする同愛社を設立し発展する。凌雲の高潔さ、博愛の理念は我々も学ぶべき。広く読み継がれて欲しい名著。2021/07/13

はたっぴ

92
先週、函館の五稜郭へ行き、資料館で読友さんお薦めの「高松凌雲」の名前を見つけた。縁を感じてこちらの吉村作品を熟読。凌雲先生の“博愛主義”は、医師として渡仏後、パリで医療技術を磨き、“赤十字精神”を身に付けたことによる。将軍の主治医だったために、旧幕府脱走軍として榎本武揚、土方歳三らと五稜郭で(明治維新最後の)箱館戦争を迎えるが、凌雲は戦の舞台裏で敵味方関係なく大勢の負傷者を手当した。終戦後は実業家からの寄付を募り、貧しい人々への医療奉仕活動に尽力。何と高潔で目標遂行能力の高い人だったろう。感動の一冊。2016/06/21

大阪魂

56
やっぱ吉村さん骨太やわー!幕末・明治にかけて活躍した医師・高松凌雲が主人公!若い頃から徳川慶喜の侍医になり、1867パリ万博には慶喜の弟と同行して西洋医学を学び、箱館戦争で榎本武揚に従いつつも敵味方なく負傷兵を治療、維新後はその医術の凄さを買われて政府とか各県から誘われたんやけど全て断って民間の一医師として活躍、金持ちしか医療受けられへんのに苛ついた凌雲さん、無料で貧民を治療する組織「同愛社」をつくって貧民救療進め大正になって亡くなられた…ほんますごい人いてはったんやね!幕末維新の裏話的で勉強にもなった!2024/06/21

キムチ

55
帚木作品も地味だが当作品の凌雲も地味(といえども快刀乱麻の活躍は無意味だが)この地味さを資料に基づき淡々と描くから吉村作品のいぶし銀ぶりが光る。筆者と同じく、私も函館着陸前、五稜郭が見せる姿に胸が熱くなる。昔はなぜかいつも涙ぐんだ・・東北列藩の仙台から行った為もあったかな。歴女の走りだった学生時代、幕末のパリ留学生の集合写真も記憶がある。凌雲が昭武に随行し、水戸藩の流れで帰国後の運命が反転し、五稜郭の戦いに身を投じざるを得なかった下りは運命か。存分に伝わる医術家凌雲の人格が素晴らしい作品。2017/09/10

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