出版社内容情報
無惨な家庭から逃れ、ボクサーを目差してゆく工員に、次々迫ってくる不幸の影。ボクシング界を背景に若者の生きざまを描く
内容説明
玩具工場で働きながら着実にその頭角を現してゆく若いボクサーを翻弄するさまざまな不幸。病的な賭博癖のある狂暴な父親、家庭を捨て病いを得て戻ってくる母親、知能に障害を持つ姉、強奪される恋人―。そして弱小ジムに籍を置くボクサーとしての不運。この孤独な若者を待ち受けるものは。長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
mondo
33
この小説は吉村昭が37歳の時に書いた初めての長編小説だ。それまで、短編小説が4度芥川賞候補となっていたが、いずれも受賞とはならず、出版業界からも吉村昭はもう終わりかと囁かれていた時期だったと本人はあとがきで語っている。その時期に、編集者から「鉄橋」の素材のボクシングに因む小説を依頼された。吉村昭は兄の繊維会社で働きながら、睡眠時間を削って、本作を書き上げた。読み始めて、少し違和感を感じたが、すぐに吉村昭の小説の醍醐味を感じながら読了することができた。若き吉村昭が志していた「文学」を味わえる一冊。2023/02/05
mun54
6
吉村昭の初期作品でプロボクサーの話。今迄読んだ物とは全く違う雰囲気で、荒々しく泥臭いが話に引き込まれた。2014/05/30
tora
5
初期の吉村昭の長編小説。このころからすでに救いのない結末を書くのが上手いのは流石。淡々と絶望の淵に主人公を落とし込んでいく描写は迫力があった。2013/12/11
みちかなもに
4
繰り返し不幸にみまわれる中で苦闘する若いボクサーの話。 東京オリンピックの年に書かれおり、日本代表がボクシングで金メダルを獲得したこともありブームだったようです。弱小ジムの儲け主義の会長、咬ませ犬、生々しいインファイターの試合風景は楽しめた。当時ボクサーは彼女ができると弱くなるため恋愛はご法度で解雇になることもあったとか。。勢いのある文章に引っ張られるように一気に読み終えた。2014/05/01
kayjya
3
昭和時代の暗いガード下の裏ぶれた風景が目に浮かびます。 物悲しい若者のお話し。 映画になって欲しい作品。2010/08/26
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- 和書
- 浅草偏奇館の殺人