出版社内容情報
明治二年三月、宮古湾に碇泊する新政府軍の艦隊を、起死回生を狙う旧幕府軍の艦隊が襲った……。歴史の秘話を掘り起した長篇小説
内容説明
明治二年三月二十五日の夜明け、宮古湾に碇泊している新政府軍の艦隊を旧幕府軍の軍艦「回天」が襲った―。箱館に立てこもった榎本武揚たちは、次第に追い詰められてゆく状況を打開しようと、大胆な奇襲に賭けたのであった。歴史に秘められた事実を掘り起し充実した筆致で描いた会心の長篇歴史小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケンイチミズバ
108
若い頃は旧幕府側を徳川の残党?長きに渡る権威と安泰にしがみつく往生際の悪さだなという風にも考えていた。しかし、年寄ると新政府軍の強硬で横暴なふるまいも鼻につき、考え方や受け止め方が同じ人間でも変化するものだと実感しています。息子が小さい頃、山ピーが主演の白虎隊を食事中に涙しながら見ていた様子なども心に残っております。新政府軍の最新鋭艦「甲鉄」奪取作戦は昔見た映画のU571を思い出しますし函館戦争の結末はわかっているとは言え、榎本武揚軍の背水の陣に肩入れして読まざるを得ません。淡々とした記録でありながら。 2021/03/22
ともくん
68
幕府軍と新政府軍による一進一退の箱館戦争。 その箱館戦争の海戦を主に辿る。 吉村昭流の記録小説によって、淡々とたが、濃密に描き出してゆく。 だが、併録されている『牛』が何故、一緒に収録されていたのかが不思議である。2018/10/22
り こ む ん
52
なぜ?開陽でなく回天なのだろ?と、思いつつ読み始める。作者は日本初の海戦を描きたかったのだな。登場人物のセリフはほぼなく、戦艦の動き、状況とが詳細に描かれ、淡々と書かれているようで熱いものを感じる。2017/08/05
shincha
48
日本史が得意でも好きでもなかった小生でも榎本武揚の名前くらいは知っている。この榎本武揚が函館(箱館)の五稜郭に立て籠って新政府軍と戦ったことも何となく知っていた。吉村昭氏の小説は物語というより歴史的事実を詳細に調査して、それを詳らかにする歴史の授業のようだ。日本人として先人達がどのような思いで戦い、そして朽ちてあったのか…知ることが、今の自分たちの立ち位置をしっかりするためにも必要であると感じる。吉村昭さんの著書は、そういう日本人にとても有益だ。もっと知りたい!読もっと!吉村昭を。2021/05/27
まーみーよー
40
戊辰戦争中の宮古湾海戦に焦点をあてた作品。同氏の「夜明けの雷鳴」とも舞台は重なるが、こちらは主人公を置かずに、幕府軍艦「回天」を主軸に史実を描いてゆく。蝦夷に新天地を求めた旧幕府軍は、新政府軍よりも海軍の力が強かったはずだが、旗艦開陽の沈没に象徴されるように、つくづく運が悪い。悪天候に会うのは新政府軍も同じ条件だろうが、次々と軍艦が失われてゆくのは、何か構造的な問題が旧幕府軍の側にあったのか?やはり、追われる側には人員も時間も余裕がないのかな。表題他一編。「牛」。こちらも良かった。2021/10/23
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