出版社内容情報
飢えて次々人を襲う熊、その熊を執念を燃やして追う男達。北海道を舞台に実際に起きた七つの事件を題材に熊撃ちの生きざまを描く
内容説明
「顔の横に、羆の頭がのしかかっている。今にも自分の頭蓋骨が羆の逞しく鋭い歯でかみくだかれるような恐怖におそわれた」―。人をもあざむく知恵を持ち、飢えた時は人を襲って食らう獰猛で巨大な羆。北海道の厳しい大自然を背景に、猟師と羆の息づまる対決を実際に起きた事件に題材を取って描いた迫真の七篇。
目次
朝次郎
安彦
与三吉
菊次郎
幸太郎
政一と栄太郎
耕平
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
アッシュ姉
67
吉村昭さん14冊目。熊撃ち猟師から聞いた実話をもとにした短編七編。あとがきによると当時月間誌へ連載していたそうで、毎月の遠方への取材、寡黙な猟師へのインタビューなど大変苦労されたようだ。肉体的にも精神的にも疲れはてていたご様子で、眠っていても羆に襲われる夢をみてうなされたそう。これらの取材が『羆嵐』を書くきっかけとなったそうで、読者としては感慨深い。2017/07/06
mondo
58
猟師と羆との行き詰まる対決を、実際に起きた事件を題材に丹念に取材して書き上げた短編7篇。いずれも短編のタイトルが猟師の名前というのも味わいがある。全部で200ページ足らずなので、半日もかからずに読み終えてしまうが読み手に伝わる恐怖感はハンパではない。事実に基づくサスペンスドラマだ。あの「羆嵐」がこの短編集の副産物というのであるから、この短編集が吉村昭にとって動物小説の原点であるかが分かる。書いた吉村昭自身が羆に襲われる夢をみてうなされるというのである。最近、熊に襲われる事件が多発しているので気を付けたい。2023/08/08
ach¡
41
クマ本が好きです!でもヒグマ本の方がもーっとフェチです。実在した猟師に萌えます!で実録だともーっと興奮します。それがなんと、こちらの1冊には7話も収録されているんですねえ。短編の性質上コンパクトですが、まさに美味しいトコ取りなんですねえ。これはもう、老練の熊撃ちになりきって読むといいですねえ。あとがきに吐露されるよもやま話も大変に興味深いですねえ。いかに吉村氏が取材に心血を注いできたか窺えちゃうんですねえ。お得ですねえ。素晴らしいですねえ!ちなみにヒグマのメスに欲情されたことがあるのはムツゴロウさんです。2016/04/16
双海(ふたみ)
20
飢えて次々人を襲う熊、その熊を執念を燃やして追う男達。北海道を舞台に実際に起きた七つの事件を題材に熊撃ちの生きざまを描く・・・。「菊次郎にとって、羆を射殺した喜びは感じられなかった。娘の復讐を果たしたという安堵はあったが、樹皮にきざまれていた娘の爪跡を思うと胸が痛んだ。また(羆の)胃の中から出てきた都腰巻の赤い繊維の塊りも、胸にやきついてはなれなかった。羆は、腰巻の上から娘の腿を食い荒らしたのだろう。」2014/05/17
猫ぴょん
18
熊の話はもう懲り懲りだ~と思ってたのになんでまた同じ作者の熊の話しを読んでるんだ~(-_-;) 漁師VS熊の短編7話。 熊に食べられて死ぬのだけは絶対イヤだとつくづく思う。 ぷるぷる・・・・・2018/04/18