出版社内容情報
沈没後九年にして瀬戸内海の底から引揚げられた悲劇の潜水艦イ33の一室から"生けるが如き"十一の遺体が発見された!ショッキングな表題作のほか「烏の浜」「海の棺」「剃刀」「手首の記憶」
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
126
          
            やっと、やっと読んだ。短編5話。誰がどう云おうと戦争が及ぼすもの・・直接的に組み込まれている人間とは別に、普通にくらしていた人々の生活にさえ押さえても溢れる事の数々ーどこぞの国の木造船が漂着したことでさえ驚くのに、目の前の浜にこんなに沢山打ち上げられて・・助かろうと船にしがみつく手が怖ろしいって・・これも戦争の一面だ。こんな国だったんだ。この国は。悲惨を越して無残だ。タイトル作は艦内での遺書に泣けた。惨いよ!誰だってそう感じると思う。今だからもっと読まれてもいいと思う。2018/01/02
          
        とくけんちょ
58
          
            夏がきて、また終戦の日が近づいてきました。なので、戦争ものの本を読んでみました。完全フィクションではなく、取材をし、史実に近づけた短編集のようです。戦争は悲惨だが、目を背けてはいけない。自主防衛、今、大きな問題となっている。辛い、怖い、悲しいから見ないのでは、自国を守るという独立国家として当たり前のことも議論できなくなる。終戦、原爆なんでもいい。この国の戦争の話をしよう。2022/08/10
          
        大阪魂
45
          
            第二次大戦でのやりきれへん死がテーマの記録文学の短編5つ。「海の柩」は北海道の寒村に流れ着いた膨大な数の、それも手が切り落とされた死体…「手首の記憶」は降伏後も樺太に攻め込んできたソ連に怯えて自決した看護師さんたち、「烏の浜」は終戦直後、樺太からの避難民が潜水艦攻撃に…「剃刀」は沖縄戦に従軍した散髪やさん、そして一番心震えたんは「総員起シ」戦時中、事故で瀬戸内海に沈んだ潜水艦が戦後8年経って引き上げられ、そこに発見された、まるで生きてるような遺体、そして沈没後死を見つめながら書き残した遺書が何通も…合掌…2023/09/18
          
        金吾
40
          
            ○戦争に関係する短編集です。「海の柩」や「剃刀」は帝国陸軍の軍紀の弛緩や日本人としての下には強く、自分に甘い性質が顕著に出ていて印象的でした。「手首の記憶」は切なくなります。2022/08/19
          
        アキ
27
          
            兵士の遺体が流れ着く漁村、看護婦集団自決を招いたソ連参戦、戦闘停止後の避難民船への雷撃事件、沖縄戦で散髪要員となった理髪屋、訓練中に沈没した潜水艦の戦後9年目のサルベージ(表題作)を描いた5編。いずれも舞台や場面、主だった登場人物といったものが、最前線や戦闘場面、兵士ではない分、余計に戦争の不条理さが際立つような印象。さらには、それぞれが戦後、記者の取材活動を通じて事実を綴る体裁をとっているところに、「記録文学の吉村昭」を重ねてみることもできそう。刊行に際しての意図を感じさせる一冊でした。2016/05/08
          
        


 
               
               
               
              


