文春文庫<br> 全滅

文春文庫
全滅

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  • サイズ 文庫判/ページ数 318p/高さ 16X11cm
  • 商品コード 9784167151072
  • NDC分類 916

出版社内容情報

無謀な軍上層部の指令のまま、絶対優勢を誇る英印軍が待機するインパールに投入された瀬古・岩崎両大隊の地獄さながらの戦闘記録

内容説明

惨敗の主因は、牟田口軍司令官の構想の愚劣、用兵の拙劣にあった。その一例が、本書で取り上げた、インパール盆地の底の湿地帯の戦闘である。沼沢と化した低地に、日本軍のなけなしの戦車支隊を投入し、全滅させた。この戦闘自体は、局地的な小規模なものだったが、インパール作戦全体を縮尺化した模型といえるものだった。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

イプシロン

36
インパール4部作の第3部にあたるのが本作。1部は小説文体による戦争“文学”。2部は抗命事件で対立した当時者、牟田口軍司令官と佐藤師団長が残した文書と回想録を軸にして、戦場に身をおいた将兵たちの証言を突きあわせて事実を炙りだそうとした証言“記録”。そしてこの第3部は、将兵たちの証言記録に基づいて、事実を坦々と綴るとしたらこうなるだろうという、戦場“再現”といえる。事実自体は一つであるが、それを浮かびあがらせる視点はいくつもあることを体現し、事実を検証するには多角性が必要であることを伝えんとしているのだろう。2019/08/29

CTC

10
87年文春文庫、単行本は73年。『インパール』の“Ⅲ”と副題されている。インパール盆地での戦車支隊(弓の戦車14連隊と15軍直轄扱いとなっていた祭のⅠ/67i、Ⅱ/154i)全滅が本書のテーマになっている。これらの部隊は、実は著者が『インパール』に記した弓の作間連隊が、ビシェンプール攻撃時に連携を待望した部隊である。連携したくとも師団命令は「支離滅裂」。彼らは彼らで苛烈な運命を義務付けられていた、という話。 インパール南道にはこの14TKRの戦車14輌が辿り着いた。M4戦車の前では無力だった訳だが。。2018/11/02

wei xian tiang

4
上級司令部への報告を作文で取り繕うための材料となる為だけに、つまり師団付参謀数名の保身のためだけに、戦術上も全く無意味なことが明らかな自殺的前進や小部隊の斬り込みを命じられる将兵の哀れに涙を留め得ない。生死こそ掛からないものの、いわゆるお役所の事業に今尚牢固として、この種の愚劣なインチキ戦果作戦と同発想の作文のための無駄事業、言い訳事業とでもいうべきものが多いことが思い起こされる。2015/02/13

あしお

2
学生時代に読んだ本の再読。当時は「旧日本軍」という別世界の話だと思っていた。しかし、その後バブルが弾けた直後に営業マンになった私が会社で直面した現実はこの本に描かれた戦場と同じだった。バブル期の「気合があれば売れる」という成功体験のままに管理職となり、不景気にモノが売れないのを「現場の営業が怠けている」と決めつけ、無茶なハッパをかけることしかできない管理職。まさにこの本にでてくる将校そのものだった。組織内の人間の心理をある程度理解できる歳になったせいか、若い頃より色々と気づくことも多かった。2018/03/23

Miho Haruke

2
インパール作戦の中で、池沼帯に投入された弓兵団の戦車隊と、急ごしらえに集められた部隊がたたかった「南北一キロ、東西五百メートル」の小規模だが文字通りの死闘が、淡々とそれだけに悲憤をもって綴られる。緻密な取材を行う筆者をしても、この戦いの全体像の記録がなかなか得られなかったとある。そのくらい「書かれていない」ことへの怒りが、筆者の筆を進めたのだろう。ごくわずかな生存将兵をキーにしながらも、様々な将兵の視点から、しかも砲撃の光や衝撃、雨の冷たさ、血便の音や死臭といった五感に訴えかけて描かれる(コメントへ続く)2014/02/13

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