出版社内容情報
名声が逆転した夫婦が葛藤の末にゆきついた"婦唱夫随"。鉄幹・晶子の激動の人生を通して夫婦のあり方を問う渡辺評伝文学の金字塔
内容説明
われは罪の子に候―。明治三十年代、雑誌「明星」の主宰者・与謝野鉄幹は時代の寵児だった。多情な彼に晶子は恋いこがれ、ついに妻の座を勝ち取る。が、度重なる女性問題、生活苦、鉄幹の人格に対する誹謗中傷…。波乱に満ちた夫婦生活の中、処女歌集「みだれ髪」で、晶子は“情熱の歌人”としての第一歩を踏み出した。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
harass
15
与謝野鉄幹・晶子夫妻の評伝。小谷野敦の本でおすすめの評伝として手に取る。実家が離散して十代の鉄幹は文学で成功しようと上京する。鉄幹は同人・明星の運営資金を妻の実家に出させ妻は放置。晶子を含む二人の女流歌人たちに同時に粉をかける。三角関係の愛の歌のやり取りを平然と雑誌で公開し妻は激怒。今の御時世でも奔放過ぎる彼らへの風当たりは強く…… ここまで我が強くなりたいものですわと思ったけどイカンでしょ。日露戦争のさなかに晶子は『君死にたもうなかれ』を発表して論議を呼ぶところで上巻は終わり。とにかく読みやすい。2013/08/01
kyouikufs
2
与謝野晶子、与謝野鉄幹を中心に描いた伝記小説になります。多くの歌、手紙などを引用し、鉄幹、晶子、他の歌人である山川登美子などの出来事や心情を描いていきます。なにより作者の構成力には、脱帽せざるをえません。2013/02/11
あいくん
0
☆☆☆☆この作品は与謝野鉄幹・晶子夫妻の生涯を伝記風にたどった長編小説です。晶子は河野鉄南に恋心を持ちます。一年に29通の恋文を送ります。しかし、与謝野鉄幹と大阪の浜寺で出会った後は鉄幹に惹かれていきます。この作品の中では手紙が大きな意味を持ちます。短歌が添えられていることも多いです。平安歌人の世界のようです。せっかく送った手紙が家族によって焼かれたりして、本人のところまで届かないこともあります。そんなおそれがあるということでも手紙は切ないです。2012/06/03
スエ
0
与謝野鉄幹・晶子夫妻の物語。「いさめますか道ときますかさとしますか宿世のよそに血を召しませな」罪と分かっていても、愛さずにはいられない。「人を恋することを恥じらうことはない」とは、確かにその通りなのだけれど。晶子の思いが成就してよかったとは思う。たとえその先に、さらなる苦しみがあったとしても。2011/10/14