出版社内容情報
子供の頃から居眠りばかり、昼行燈と呼ばれた大石内蔵助。大らかな男が、人としてなすべきこと──仇討ちを果すまでの生涯を描く。
内容説明
主人である浅野内匠頭が刃傷沙汰さえ起さなかったら、平々凡々の一生を楽しく送ったに違いない男、吉良邸討入りの夜、降りつもった雪の中、「寒い、寒い」とつぶやきながら、丸めた躰を死に向って運んだ男。人として男として、なすべきことをやってのけた、その男、大石内蔵助の生涯をさわやかに描いた傑作長篇。
著者等紹介
池波正太郎[イケナミショウタロウ]
大正12(1923)年、東京に生れる。昭和30年、東京都職員を退職し、作家生活に入る。新国劇の舞台で多くの戯曲を発表し、35年、第43回直木賞を「錯乱」によって受賞。52年、第11回吉川英治文学賞を「鬼平犯科帳」その他により受賞する。63年、第36回菊池寛賞受賞。作品に「剣客商売」「その男」「真田太平記」“仕掛人・藤枝梅安”シリーズなど多数。平成2年5月3日没。東京・浅草に池波正太郎記念文庫がある(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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とん大西
119
いやぁ、味わい深い。粋も粋、なんとも粋な大石内蔵助の生涯。家老として多忙をきわめながらも泰平の世に身を委ね人生を謳歌していたものだが…。うん、起こったしまった刃傷松の廊下。将軍綱吉の沙汰は贔屓の引き倒し。即日切腹の浅野内匠守よ、哀し。家臣たちの行き場のない義憤と悲憤のベクトルは吉良上野介へ。事件さえなければ妻子とともに平穏な日々を送ることができていたやもしれぬのに。死はいつかおとずれる。だからこそ平凡な日常を渾身をこめて愛でてきた。討ち入るその時まで、そよ風のごとき大石内蔵助。いやぁ、ニクいねぇ。2023/04/08
Kira
18
図書館本。2年ぶりの再読でも面白さが味わえるのは、池波小説だから。読みやすい文章と小粋な台詞。歴史的な事柄の解説はとてもわかりやすい。またいつか再読するだろうと思う。2024/06/02
Kira
12
図書館本。再読。再読でもページをめくる手を止められない面白さを味わった。本書を初読みして以来、忠臣蔵に興味を持ち、歴史小説も池波氏の書いたものなら読めるようになったという、私にとっては思い出深い作品。これから先、『堀部安兵衛』と『編笠十兵衛』も再読せずにはいられないだろう。2022/02/27
Moonlight_Hope
11
▶隣といって差し支えない備後松山の改易に伴う城受け渡しの話は知らなかった。 その経験が赤穂藩の末路と重なるとは運命の皮肉。 ▶何もなければ、大石内蔵助は浮気性なのんびりした家老として記憶にも残らない程度のひとでしかない、自分ではどうしようもない事件事故により人生が左右される物語。平成ならバブル、リーマンの頃に人生の岐路を選ばざるを得なかったひとたちに思いを馳せる。 ▶死を覚悟し女色に溺れゆく、それはわかる。 ただ、欲望のはけ口とせず、尊厳を持って接する。 これはできない。 これは池波正太郎のポリシーだね。2024/03/17
タカシ
10
下巻は殿中から討ち入りまでの話。面白かったですね。内蔵助は腑抜けを演じるために女郎屋に行ってたと思ってたけど本作を読むと違うのかなという印象。部下に詳細を告げないのも作戦なのか性格なのか分からない感じでした。でも内蔵助はやはり大物ですね。2017/09/14