内容説明
長年の旅と探求がこの作家にもたらした、深沈たる一滴、また一滴―。酒、食、阿片、釣魚などをテーマに、その豊饒から悲惨までを、精緻玲瓏の文体で描きつくした名短篇小説集は、作家の没後20年を超えて、なお輝きを失わない。川端康成文学賞を受賞した「玉、砕ける」他、全六篇を収める。
著者等紹介
開高健[カイコウタケシ]
昭和5(1930)年、大阪生れ。大阪市立大学卒業。33年「裸の王様」で第38回芥川賞受賞。43年「輝ける闇」で、毎日出版文化賞を受賞する。56年、ベトナム戦争から食味、釣にわたる「すぐれたルポルタージュ文学」によって第29回菊池寛賞受賞。62年、自伝的長篇「耳の物語」で日本文学大賞受賞。平成元年死去(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
260
表題作を含め、6つの短篇で構成される。「ロマネ・コンティ1935年」は、様々な俤からなる一種の幻想小説。どこまでが幻想で、どこからが現実なのか判然としないところに小説を成立させる手法。そもそも小説家と重役のいる場所も判然としない。女との邂逅はパリなので、ここもあるいはパリであるのかもしれない。そうすると、そこに立ち現れてくるのはヘミングウェイである。女の面影はイングリッド・バーグマンを彷彿とさせる。2人の男たちの前にあるのは、ラ・ターシュ1966年と件のロマネ・コンティ1935年である。ラ・ターシュに⇒2025/09/09
キムチ
45
昭和の時間に生きた男、文士、そして釣人。文字、行間から臭気と熱気がゆらっと立ち上がる。収められている6篇はそこに住む人々にがっぷり四つに食い込み食はもとより民の暮らしの足元をつつく。彼が活躍した時間、子供だった私にはとてつもない男と映った。表題が秀作。知る人ぞ知るあれ グラスを通して彩の向こうに見える語りの上質な事と言ったら・・とはいえ1100万の類もある代物は無縁の世界。多彩な探訪記を読む中で煌めくのは香港、シャム湾のそれ~灰いろの玉になった垢は粉となって砕け‥ゴキブリで釣るナマズ、海岸に立つ貝塚はそこ2025/11/14
Shoji
45
作者の嗜好や趣味である、釣りやアヘン、ワインなどを取り上げた短編小説です(アヘンも趣味や嗜好なのかな?)。全篇を通して、退廃さや重苦しさを感じる作品です。私個人としては、『黄昏の力』という作品に惹かれました。昭和の経済成長が著しかった頃の東京湾の汚さ、ドブの臭い、仕事が引けた後に見るブルーフィルムの淫靡な様子が実にリアルに描写されていて、何とも言えぬ情緒を感じました。もちろん、他の作品も良かったです。2021/08/16
みっぴー
41
《ナンバーズフェア》第二弾。小説というより体験談と言ったほうがいいかもしれない。阿片の話、釣りの話、料理の話、そして酒の話。舞台は主にアジア。滞在した場所の文化や風俗、現地人とのやりとりの描写が非常に濃密で、体臭が伝わってきそうなレベルです。露骨な表現も多々ありますが、それが不思議と下品には感じないのは、作者の技術力ゆえのものでしょう。『ロマネコンティ1935』がやっぱり一番面白かったです。ワインを疲れきった女性に例える(笑)なるほど。『玉、砕ける』は、怖いけど一回体験してみたい。やっぱり砕けるのかな?2018/07/27
奥澤啓
34
現在、新刊としては文庫しかないので元版(1978年刊)の帯文を紹介したい。 「久々の短篇小説集。この作家長年の旅と探求がもたらした深沈たる一滴、また一滴。酒、食、釣り、阿片など快楽の諸相、その豊饒から悲惨まで隈なくきわめつくされた完熟の仕上がり!」 このような戦後の散文表現の達成といっていい名文の数々は、批判や批評を受けつけない。読むだけでなく、ゆったりした気持ちで、原稿用紙に一字一字写して堪能するといいと思う。私にとっての最高の読書は筆写である。読んだ時とは別の発見がかならずある。 2015/03/10
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