出版社内容情報
釣り竿一本を杖と頼み、アラスカ、カナダ、北米のウィルダネスの奥深くへ分け入った陶酔と苦行の日々。ヤングから熟年まで男の夢をかきたてる待望のカラー文庫版!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
288
北はアラスカからカナダの西海岸を経てアメリカを縦断、横断し、果ては南米の彼方南極まで釣り三昧という、およそ釣りに興味のない人にはバカバカしくも壮大、そして釣り好きには果てしなくロマンティックな企画。これはその北米篇。立案者は作家自身、お金を出したのは週刊朝日という、なんともバブリーな怪物本。圧巻はやはりアラスカのキングサーモンか。水上飛行機で原野に向かい、そこで何日かかけてひたすら狙うというスケールの大きさ。シルヴァーサーモンや北極イワナも次々に上がる。もうこんな暇とお金と体力の蕩尽は不可能だろう。 2016/02/16
ゆいまある
47
(電子は合本なのでどこまでが上かはっきりしない)アマゾン釣り紀行オーパ!が面白かったのでこちら。釣りをしながらアラスカから南米まで南下する旅。アラスカ辺りでもっとサーモン釣るのかと思ったら結構さくっとユタ州まで行ってしまう。釣り意外の話題はかなり思い切って省かれている。砂漠の真ん中でのバス釣り。餌はイモリ。スポーツフィッシングを徹底する開口さんなのでキャッチアンドリリースが基本。魚や釣り場への愛溢れる言葉は詩的で美しくキラキラ輝いている。物語の筋を追わなくていいので、忙しい合間にもちょこちょこ読める。2019/02/03
さっと
6
「何かゴツイことやりなさいよ」編集者にそう言われて小説家は思い立つ。「アラスカをふりだしに北米大陸と南米大陸を釣竿を片手に横断してみたらどうだろう」そりゃ大陸横断なんて何人もやっていることさ。「しかしだね、しかしだヨ、釣りでそれをやった奴が日本人でいるとはまだ聞いたことがない」。いつもの長い前口上から途方もない釣りによる南北両アメリカ大陸横断の物語は始まる。『フィッシュ・オン』の冒頭を飾り、晩年の引退試合『オーパ、オーパ!!』でも幾度も描かれた“最後の開拓地”アラスカからスタート。表紙はレッド・サーモン。2018/11/10
東森久利斗
5
”半ば子供の脳を持った大人衆と 半ば大人の脳を持った子供衆と そういう私自身のために” 痺れるフレーズ。オタワの奇蹟、幻の魚マスキーとの闘いがクライマックス、まるでドラマのよう。大自然での悠久の時の流れ、ニューヨーク、摩天楼、5番街の喧騒、ハンバーガーとビール。相対する環境に共通の生命力、人間の小ささ、愚かさ。その一瞬を捉えた写真、写真に添えたコメントが最高。2022/11/16
タカ
3
アラスカから北米にかけて、悠久の大自然を背景に日本の釣り師が世界に挑む。開高さんの言葉の選び方には独特の世界観とユーモアと気高さを感じてしまう。日本人が忘れてはならない境地を釣りを通じて思い出させてくれる。 釣りには門外漢の私だが、なぜか興味深く読み進んでしまった。2024/05/22