出版社内容情報
大杉栄と伊藤野枝、大杉の甥橘宗一少年。関東大震災の混乱のさなかに甘粕憲兵大尉の手で惨殺された彼らの悲劇!歴史の彼方の真実を描破した鎮魂の評伝大河長篇
内容説明
関東大震災の混乱のさなかに、アナーキストだった大杉栄は、伊藤野枝、大杉の甥橘宗一少年とともに、甘粕憲兵大尉らの手によって惨殺された。妻保子と神近市子、伊藤野枝と愛の四角関係をむすんだ彼の前半生をはじめ、自己に誠実に真摯に生きた大杉栄の悲劇への軌跡を克明に描いた壮大な長篇評伝小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
澤水月
3
大杉栄の人間関係を巡り惜しくも4角関係刺傷事件までで休筆となっていた「美は乱調にあり」の続篇。明らかに筆者は辻潤、武田文子、有島武郎など大杉/野枝以外に興味が移っているようで小説というより大正の様々な文士の評伝に近くなっている。また連載中に続々読者から届く様々な人物の知られざる面が実に興味深い。やはり辻の「ふもれすく」は泣ける。甘粕の謎は深まるばかり2011/06/26
Gen Kato
2
再読。『美は乱調にあり』が小説体で書かれていたのに、続くこちらはノンフィクション評伝的な語り口。初読のころは瀬戸内「晴美」先生のこのへんの伝記小説にホントはまっていたものだなあ、と懐かしい気分になりました。2015/04/12
belier
1
前作から16年を経て日陰茶屋事件のその後が書かれた。大杉と野枝の物語というより、二人に関係する人々を追いかけていて群像劇となっている。中平文子という人や有島武郎の心中など興味をそそられた人や事件もあったが、話が長くなって少しじりじりした。本作は、まず二人を惨殺したとされた甘粕のエピソードから始まっている。この人物を評価する人が多いらしい。しかし最終的に瀬戸内がそれに引きずられていなくてほっとした。今の評価ならサイコパスだ。二冊読み終えて、大杉栄は主義者だが、理論よりも人間的に信奉されていたように思えた。2025/07/19
ymazda1
1
小説っぽすぎる乱調より、こっちの方が好きというか、最近、乱調と諧調が岩波現代文庫から再版されてたのを見て、寂聴さんが晴美さんだった頃に書いた実在の女の人を主人公にした他の作品も、シリーズで続けて再版してくれんかなあと、ちょっと思った・・・それくらい、この人の評伝的な作品は好きだったりする。。。
かすが
1
膨大な資料と丹念な取材がうかがえる。2012/04/23