出版社内容情報
権力の手によって戦争の非人間性の中に投げこまれた梶の苦悩。夫への愛にだけ生きる証を見出そうとする美千子。人間の崇高さを描いたベストセラーついに文庫化
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Sumiyuki
2
映画未鑑賞。挫折しそう。。@あの、どす黒くなった額の上を虱がぞろぞろ匍っていた被害者のことだ。それを避けて、彼が女達に行わせた凄まじい肉欲の地獄絵で、あの顔を塗り潰そうとするだけである。塗り潰せるものではなかった。その男のために怒り、喋り、悩み、そして結局は妥協してしまった一人の日本人が、どんなにもっともらしい理屈をこね廻したところで、家に帰れば青畳の上に寝そべってスカートからはみ出ている妻の膝小僧を覗き見するような男に過ぎないことを、その男やその男の仲間達は知っているに違いないのだ。2018/09/10
本の小さな虫
1
上中下と3巻。戦争が人間を人非人せしめる理由がよく理解できた。戦争は理屈や道理など「命令と指揮」により簡単に無視されてしまうのだ。不本意に戦場に放り込まれた方達に哀悼の念が湧き上がり、今の平和を何としても保たなければ、と思う。帰還兵の方が戦争体験の話をしたがらなかった、という気持ちは、本書を読めば深く理解できるだろう。もし自分がそうなら決して思い出したくない。ただひたすらに「生きて帰りたい」と願う事と「そうしなければ生きられないから」やってしまった事との狭間でどれ程苦しんだことか。今の平和を感謝する。2024/09/07