内容説明
童歌をうたうと必ず雪崩で死ぬという怪談に抗いながらも囚われた若者の苦悩と悲劇を描いた表題作、アラスカ現地に取材した異色の傑作「真夜中の太陽」、実感をこめて富士のおそろしさを表現しきった「春富士遭難」、スキーヤーの身勝手さを衝く「コブシの花の咲く頃」など全六篇を収録。円熟期の傑作山岳小説集。
著者等紹介
新田次郎[ニッタジロウ]
明治45(1912)年長野県生れ。本名藤原寛人。無線電信講習所(現在電気通信大学)卒業。昭和31(1956)年「強力伝」にて第34回直木賞受賞。41年永年勤続した気象庁を退職。49年「武田信玄」などの作品により第8回吉川英治文学賞受賞。55年2月没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
サンダーバード@怪しいグルメ探検隊・隊鳥
57
「剱岳」や「八甲田山死の彷徨」など、史実を基にした圧倒的な重量感を持つ長編とはちょっと趣を変えた短編集。登山仲間の怪談話から発展する表題作の「雪のチングルマ」、遭難者の死の原因を探ろうとする「羽毛服」など6編。雪のチングルマも羽毛服もファンタジックというか、ちょっとしたホラーの様で新田氏としては変わった作風。この話に出てきた「釜トンネルの雪小僧」の怪談は私も昔仲間から聞いたことがあるのだが、元ネタはこの小説から?それとも山屋の間で広く伝わる怪談なのだろうか?★★★2016/02/13
タツ フカガワ
54
いやあ面白かった。6編のうち5編が遭難小説ながら、それぞれ趣向が異なる内容。たとえば表題作は怪談めいた遭難事故で、「羽毛服」と「コブシの花の咲く頃」は遭難死の原因を探るミステリー仕立て。「春富士遭難」は実際にあった事故を題材にしたもので、ベテラン登山者たちを襲う嵐がなんとも凄まじい。その恐怖感を払拭するような「赤い徽章(バッジ)」は女性の恋心を絡めた爽やかな一編と、粒選りの短編集でした。2023/08/26
にし
41
六編からなる短編集。後半四編は読み応えありです。【春富士遭難】からは面白みが増し、【赤い徽章】は主人公の女性に思い入れが出来てしまって続きを求めてしまうほどでした。【真夜中の太陽】はアラスカの雄大さと共におおらかな土地柄が書き表されています。でも新田先生の本は長編の方が面白いと思いました。2014/01/14
キムチ
39
いつもながら新田氏の文章は読み易く、楽しく、頁が進む。遭難に拘った短編が5篇とアラスカ物語の上澄みとでもいうような1篇が収録されている。どんな里山でも「遭難」という文字は脳裏の片隅にある山登り。暗い、悲惨という意味でなく、教訓としても読める。何れの作品でも数人が悲劇の結末を迎え、ある意味自己責任というワンディとなっている。 新装での再読だが、読み返す価値は十分あった。「雪のチングルマ」はいうなら雪山の山岳ホラー。盛夏、晩夏と可愛らしい姿が、雪の斜面を転がる赤い雪煙の幻想と化し 私にもデ・ジャブになりそう。2014/02/18
大阪魂
35
新田さんの山岳小説、6編の短編集!いつもの人間模様だけちごて今回は遭難にホラーもかかってて最初の「雪のチングルマ」とかキャンプでの先輩たちにはほんまゾワってきてしもた…優しい登山家の遭難の真相探る「羽毛服」も怪談、人のエゴが遭難に繋がってしもた「コブシの花の咲く頃」はイヤミス、富士山での大量遭難描いた「春富士遭難」は極限下のリーダーたちの悲哀、って暗いのが続いてやっと後味よーなったんが山岳研修会でのプチ遭難も絡めた女性たちの微妙な人間模様の「赤い徽章」とアラスカ取材録の「真夜中の太陽」、いくなら夏山かなー2026/01/22




