内容説明
宝永4(1707)年突然大爆発を起こした富士山は16日間にわたり砂を降らし続け、山麓農民に甚大な被害をもたらした。時の関東郡代伊奈半左衛門忠順はこうした農民の窮状を救うべく強く幕府に援助を要請した。だが、彼が見たものは被災農民を道具にした醜い政権争いだった―。大自然の恐怖を背景に描く長篇時代小説。
著者等紹介
新田次郎[ニッタジロウ]
明治45(1912)年長野県生れ。本名藤原寛人。無線電信講習所(現在電気通信大学)卒業。昭和31(1956)年「強力伝」にて第34回直木賞受賞。41年永年勤続した気象庁を退職。49年「武田信玄」などの作品により第8回吉川英治文学賞受賞。55年2月没(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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優希
51
富士山の宝永噴火の物語でした。莫大な被害を助けるべく動いた伊奈半左衛門。幕府に援助を頼んだものの、彼が目にしたものは醜い政権戦争というのが皮肉ですよね。大自然の恐怖は下巻でどうなるのでしょうか。2023/08/10
Book & Travel
39
1707年、富士山が最後に噴火したいわゆる宝永噴火の顛末を描いた作品。冒頭から、記録を元にした噴火の生々しい描写が強く印象に残る。江戸でも火山灰が降り、富士山の東、駿東郡と足柄上郡では場所によっては降砂が1m以上堆積し、壊滅的な被害を受ける。当地を治める小田原藩と幕府は救済に乗り出すものの、それを政争へ利用しようとし、他人事の役人たちの姿にも呆れるばかりだ。対照的に、被災地を任された関東郡代・伊那半左衛門の奮闘ぶりが胸を打つ。新井白石と対峙する場面は特に読み応えがあった。復興事業の難しさを感じつつ下巻へ。2025/11/09
kawa
38
宝永の富士山噴火(1707年)で何メートルもの火山灰におおわれ瀕死の危機に見回れる農民たち。そんな惨状を横目に権力争いに明け暮れる幕府官僚たち。そんな中で農民の救済に奮闘する関東郡代・伊奈忠順(ただのぶ)が主人公の歴史小説。手に汗引き込まれで下巻へ。2023/05/03
金吾
35
○迫力のある話です。被災民の餓死や兆散を防ぎ、土地を復興させようとする伊那郡代の孤独な戦いに読みながら感情移入をしてしまいます。それにひきかえ幕府高官たち悪辣ぶりにはどの時代も変わらないのかなとも思いました。2022/08/23
James Hayashi
33
宝永4年(1707年)富士が噴火し甚大な被害をもたらす。作品は富士の噴火を説明したのでなく、噴火の後の農民と幕府や役人のいざこざを描いている。宝永の噴火は富士の山に大きな傷跡を残したが、死傷者は記録されていない。しかし風向きにより火山灰が足柄近辺に降り積もり農作物が全滅し、食うのにも困るという状況。大震災後の政府の対応と呼応するとのことで手に取った書。下巻は如何に。2018/02/01
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