内容説明
十年ぶりに再会した美月は、男の姿をしていた。彼女から、殺人を告白された哲朗は、美月の親友である妻とともに、彼女をかくまうが…。十年という歳月は、かつての仲間たちを、そして自分を、変えてしまったのだろうか。過ぎ去った青春の日々を裏切るまいとする仲間たちを描いた、傑作長篇ミステリー。
著者等紹介
東野圭吾[ヒガシノケイゴ]
1958年、大阪生まれ。大阪府立大学電気工学科卒。エンジニアとして勤務しながら、1985年、「放課後」で第31回江戸川乱歩賞受賞。1999年、「秘密」で第52回日本推理作家協会賞受賞
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
823
東野圭吾は常日頃から新聞やその他のメディアで今日的な話題や問題を探っているのだろう。そうして、今回取り上げたのが性同一性障害(障害という言葉は本来は相応しくないのだが)である。それをこのような物語に仕立て上げるのだから、その力量たるや凄まじいばかりである。しかも、作家がここに組み合わせたのは、男の世界たるアメリカン・フットボールであり、青春の回想と団結であった。このアイディアがまた卓越したものである。物語から滲みだす切なさは、あるいは『白夜行』を上回るかと思う。またミステリーとしても一流であり、隙がない。2021/12/13
Tetchy
631
男と女。その狭間で苦しむ人間たちがいる。お姉系キャラとして性同一障害者がTVで堂々と振舞っている現在からみれば、隔世の感を覚えるかもしれないが、本書発表当時の2001年はまだ認知度が低く、異端とされていた。物語に幾度となく登場する、知らない方がいい、そっとしておいてやれ、という言葉はまさに本来取るべき方法だろう。ジェンダーが反転する趣向が繰り返されるにつれ、一体男とは女とは何なのだろうと思わざるを得ない。心の解放と一抹の寂しさ。男と女の幸せとは一体何なのだろうか?そんな他愛もないことを読後考えてしまった。2012/12/02
Kircheis
511
★★★☆☆ 元大学アメフト部のメンバーが、ある事件にそれぞれの立場から関わっていく話。 ジェンダーに関する東野的考察が全編に散りばめられてて、そこにお得意の謎がからめられているといった感じ。 東野さんが描く夫婦は大概倦怠期を迎えてる気がするなぁ。2019/04/29
遥かなる想い
437
東野圭吾の幅広さのようなものを感じた一冊。 系統的には『秘密』に似ているような気がする。性同一性障害と言えば、昔金八先生で上戸彩が演じていて知ったのが初めてだが、東野圭吾はそこのアメリカンフットボールの仲間の友情・恋・そして現実をうまくからませながら 読者を引き込んでいく。2001年の作品らしいが、題材としては理解されたのだろうか?2012/10/28
mmts(マミタス)
334
分厚いためにはたして読了するのかかなり不安でした。ところが読んでいるうちに怒涛の展開に次から次へと頁を捲るペースが早まりました。読んでいるうちに興奮がおさまりませんでした。最後の最後まで展開を解読することが出来ませんでした。しかしながら難読ではないので初心者にもオススメのミステリーです。15年前はほとんどXジェンダーの概念は浸透してません。なので、Xジェンダーのことにはビックリしました。根本から男女のあるべき存在意義が覆りました。ジェンダーに悩む人にもオススメの一冊ではないでしょうか。東野圭吾さん、天才。2016/12/27