出版社内容情報
昭和八年、「月辰会研究所」から出てきた女官が自殺した。特高係長は謎を追うが──。満洲と日本を舞台に描いた未完の大作千七百枚
内容説明
昭和8年の暮れ、渡良瀬遊水池から他殺体があがった。そして、もう一体。連続殺人事件と新興宗教「月辰会研究所」との関わりを追う特高係長・吉屋謙介と、信徒の高級女官を姉に持つ萩園泰之。「『く』の字文様の半月形の鏡」とは何か?背後に蠢く「大連阿片事件」関係者たちの思惑は?物語は大正時代の満洲へと遡る。未完の大作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
雪風のねこ@(=´ω`=)
71
満州国に関東軍と阿片。物語は大きくなっていく。権力を持っているものでも、いや持っているからこそ神仏に頼りたくなるのだろう。そんな中でも色欲を挟み込んでくるのは著者らしいと言える。深町女官にしろ相当な欲だったに違いない。上巻の言動からよく解る。未完となったのが残念だが…想像するに主要な人物は互いに殺し合い、最後に萩園、吉屋がやっと逢って物語を締める…というような感じかなぁ。それにしても思うんだが、劇中に出てくる料理の美味しそうなこと!2022/08/06
まーくん
63
清張未完の大作、下巻。壮大なスケールで展開されるストーリー。舞台は北関東から満州へ、テーマも宮中、新興宗教から阿片まで。月辰会の謎を追う特高係長と華族の次男。渡良瀬遊水池に浮かぶ死体。吉林省九臺の道院。いったい収拾つくのかと心配になるくらいだが、そこは大作家、次第に各テーマが繋がり謎が解き明かされていく。が、何しろ未完ゆえ結末がわからない。深町女官から先、宮中へのつながりが如何に。大宮さま(貞明皇太后)まで行き着くのか?呪いの先は?そのへんのタブーを清張の筆はどこまで迫ろうとしていたのか?2019/03/05
sayan
25
思えば本書(下)の登場人物同士のやりとりは、松本清張の宗教観が強く反映されている、とも読める。それは結局のところ新興宗教は性と金欲を満たす手段である、という見方か。個人的には、帯書きに惹かれて本書を手に取ったものとしては、宮中という伝統的な価値観・作法と新興宗教の教義の間でゆれる人々のリアリティをもっと描いて欲しかった。特に、本書は日本が国際連盟を脱退し、軍部の力が強くなるなかで人々が感じる根拠なき高揚や不安が著しく高まる時代設定だけに、宮中の人々が「現世利益」にゆれる機微な心理描写が正直読みたかったな。2018/01/08
jima
18
未刊というのが残念。広さも深さも、すごい作家だったとわかる。2021/12/17
みなみ
18
上巻のいろいろな事が下巻でつながり、これからという時の未完の大作。結末まであと少しだという事ですが、松本清張さんだから、その少しにいろいろな話があったのに‥‥と思うと本当に惜しいです。2018/05/31
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