出版社内容情報
上司を斬り密通の妻を廃坑に突落として逐電した男の辿る数奇な運命。直参に変身した男は隠し金山探索の密命を帯びて西国へ赴く!
内容説明
妻と密通した上司を斬り、妻をも廃坑に突き落して逐電した勝山藩士・伊丹恵之助。お茶壺騒動にまきこまれて実力者北条宗全と知合い、江戸へ出る。養子縁組で直参旗本に変身、太田と改姓した恵之助は、契りを結んだ柳橋芸者おえんに3年間待つよう因果を含め、西国郡代手附として日田へ赴く。任務は隠し鉱山の銅の流失探査だ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
パトラッシュ
112
私的には松本清張の最高傑作と信じる。時代物とミステリに政治経済上の陰謀を絡ませ、山岳冒険ドラマや伝奇性も加わった文字通りの綜合小説なのだから。初読時は面白さのあまり徹夜で読み上げたが、何度でも読まされてしまう。密通した妻を廃坑に突き落として脱藩した恵之助が思いがけず幕府直参となり、銅の横流し疑惑を調べる密偵として日田に赴任するまでの運命のいたずらに翻弄される姿がたまらない。謎の山伏や旧知の振矩師との出会い、隠し金山の存在に気付くまでの波乱万丈の物語は、大長編ながら一瞬の緩みもなく引っ張られていく。(続く)2023/07/10
goro@the_booby
34
密通していた上司を斬り妻を鉱山の竪穴に突き落として逐電した恵之介。旅の途上で知り合った茶坊主宗全に誘われるまま江戸で名を変え直参旗本になり、幕府の命により天領日田へ赴くことに。日田では前任者が惨殺され何やら不穏な気配。どこかニヒル感じの恵之介がいいね。清張が5年にわたり連載した本編、果たして今後の運命は如何に!絶対あの老婆は…!?次巻へ続くのだ。清張の時代物面白いどんな資料を紐解いて物語を組み立てるのか流石です。2016/01/31
旗本多忙
20
これは非常に面白い。大方の筋だけでも書こう。伊丹恵之助は、妻の密通を知り、殺害しようと廃坑の深い穴に突き落とした。そして相手である上司を斬って逐電した。奈良井宿まで来た恵之助は、宿場で起きた騒動で坊主の北条宗全と知り合う。宗全の計らいで江戸に出て養子に行って太田姓となる。さらに筑前日田の代官気附となり旗本身分に出世する。宗全の密命で恵之助は日田の鉱山に絡む不正、前任者の怪死事件の真相を探りに西国に向かう。推理の大家なので細かく書かれているが、読みやくて久々に読みごたえある作品に出会った。2023/04/13
キムチ
4
妻の不義密通での修羅場で、人生が反転した男恵之介。その逐電騒動は金山ので蠢く暗い闇で展開する。止められない~と云う面白さだった。
KAZ
3
そうか、生誕100年なんだ。前から読みたいと思って積んでたんだけどようやく手が出た。2009/11/24