内容説明
―西郷と大久保の議論は、感情に馳せてややもすれば道理の外に出で、一座、呆然として喙を容るるに由なき光景であった―。明治六年十月の廟議は、征韓論をめぐって激しく火花を散らした。そして…西郷は敗れた。故国へ帰る彼を慕い、薩摩系の士官達は陸続として東京を去ってゆく―内戦への不安は、現実となった。
著者等紹介
司馬遼太郎[シバリョウタロウ]
大正12(1923)年、大阪市に生れる。大阪外国語学校蒙古語科卒業。昭和35年、「梟の城」で第42回直木賞受賞。41年、「竜馬がゆく」「国盗り物語」で菊池寛賞受賞。47年、「世に棲む日日」を中心にした作家活動で吉川英治文学賞受賞。51年、日本芸術院恩賜賞受賞。56年、日本芸術院会員。57年、「ひとびとの跫音」で読売文学賞受賞。58年、「歴史小説の革新」についての功績で朝日賞受賞。59年、「街道をゆく“南蛮のみち1”」で日本文学大賞受賞。62年、「ロシアについて」で読売文学賞受賞。63年、「韃靼疾風録」で大佛次郎賞受賞。平成3年、文化功労者。平成5年、文化勲章受賞。平成8(1996)年没
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感想・レビュー
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優希
92
西郷どんと大久保さんの議論は道理から外れるところもあり、仲介できる人はいなかったのでしょう。征韓論は敗れ、西郷どんは祖国へ。政府内では混乱を起こし、まだ個人が世間を揺らす時代なのだなと思わずにはいられませんでした。内戦の不安が現実となったことで、国はどうなるか考えてしまいます。2019/01/24
やっちゃん
83
酒乱の黒田清隆がやらかしたエピソードや小野組の話など主筋と関係ない話が印象に残る。ずっと同じ人物ばかりで飽きてきたところに海老原や宮崎が出てきて面白くなってきた。2024/02/16
サンダーバード@永遠の若者協会・怪鳥
83
第三巻読了。征韓論に敗れた西郷は職を辞して鹿児島に戻る。西郷を慕う薩摩軍人も大挙して辞職をする。ただ、西郷という捕えがたい思想の持主の本当の気持ちはよくわからない。当時ですら本当にお互いの気持ちを分かり合えていたのは、政敵とされる大久保のみであったというのは皮肉。それにしても、この当時の天皇の権威はあまりにも小さく、軽い。その後の日本を考えると信じがたい。2013/02/11
五右衛門
76
読了。堪能しております。司馬湯舟にどっぷり浸かってます。西郷どんが東京を去り、桐野らも同様に。当時の内閣(太政官)の混乱ぶりが想像できないくらいの重さを感じました。そんな中での川路大警視。大久保卿の懐刀というか逆に頼っている感が満載。頼もしすぎます。けれども凄い勢いで鹿児島火薬庫の熱量が上がっています。何故かゾクゾク感とブルブル感が混じり合った様な感じがしています。一息入れて続編行きます。2021/08/07
とん大西
71
征韓論-初手は敷居の高かった教科書チック言葉。三巻読了した今、超濃厚な歴史分岐点では?と、漸くとてつもない重みを感じ始めました。維新2トップが袂を分かった論争の関ヶ原。西郷なくば倒幕はあり得ず、大久保なくば王政復古もあり得ず。西郷あっての大久保、大久保あっての西郷…のはずだった。国家の歩みと供に違う方角を向いてしまった互いの正義。表でぶつかり裏で踊る征韓論。負けた西郷、負かした大久保。そして彼らの正義に巻き込まれた政友政敵達。国家レベルで後世に数多のifを残したという意味でも傑出した分岐点と言えんやろか。2017/12/14