内容説明
突然の災厄が、嘉兵衛を襲った。彼自身がロシア船に囚われ、遠くカムチャツカに拉致されたのだ。だが彼はこの苦境の下で、国政にいささかの責任もない立場ながらもつれにもつれたロシアと日本の関係を独力で改善しようと、深く決意したのである、たとえどんな難関が待ち受けていようとも…感動の完結篇。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
79
最終巻です。この巻はやけに小説らしく感じました。ロシア兵に囚われるという突然の災厄に襲われる嘉兵衛。カムチャッカに拉致されたことで、ロシアと日本の関係を正当化しようとする覚悟は見事です。しかし、最終的に嘉兵衛の人生と共に高田屋も一代で終わりを告げるのが辛いところですね。波乱万丈の物語でした。2019/01/15
k5
76
ここまでためてきたものが爆発する感じの面白さ。高田屋嘉兵衛という教科書に載っていない人物の魅力を縦横に描いています。異文化コミュニケーションと命をかけた交渉の重みが抜群のエンターテイメントであるとともに、ナショナリズムではなく人間どうしの交流こそが外交であるという司馬遼太郎の信念のようなものを感じます。こじつけですが、司馬文学の北方への憧れとは、中央権力が及ばない場所での多様性への期待値なのではないかと思いました。2023/03/19
NAO
73
嘉兵衛にとって好運だったのは、彼が淡路を出て以降出会う人物のほとんどが嘉兵衛のことを認め、彼の本質を正しく理解してくれたことだろう。嘉兵衛をカムチャッカに連れて行ったディアナ号の指揮官リコルドも、言葉は通じないながら嘉兵衛の人柄を理解し、愛し、嘉兵衛を信じ続けてくれた。出会った相手が悪かったら、嘉兵衛は、何ひとつできないまま捕虜として異国の地に果てたかもしれないのだ。この高田屋嘉兵衛は、稀代の強運の持ち主だったのだろう。そして、その嘉兵衛がロシアと日本の調停役となったことは、日本にも幸運なことだった。
やっちゃん
70
外交官はここまで思慮深くなきゃダメなのか。嘉兵衛の常に如才なく、譲れぬとところは厳しく要求する交渉の上手さよ。海外でヘコヘコしてる現代人に参考になりますね。物語の面白さは失速したけど良い小説だったなあ。2022/11/23
金吾
67
○鎖国下でありながら戦略的視点を保持し、かつ人を魅了する一人の英雄の一生を追いきったという印象があります。また、リコルド少佐との交流も良かったです。司馬さんの本を読むと日本も捨てたものではないなあと感じますし、今際の際の言葉でこの話を締めるところに司馬さんの小説家としての凄さを感じました。2021/01/16