出版社内容情報
海上はるかに、胸にせまるような嵐の気配がある。それは若者にとって何を意味するのか。俊英が描く澄明な悲しみに満ちた小説空間
内容説明
ある夏の日、青年は失踪者のように都会を脱け出し、その小さな島にやってきた。彼はそこで、無菌豚を飼う奇矯な老人“天気作り”とその娘に出会う。そして、いわれるままに、虚しくも幻想的なある訓練に打ち込んでいく―。芥川賞受賞の俊鋭が贈る、澄明な哀しみと優しいユーモアにみちた若き生のメッセージ。三島賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
大福
2
ファンタジーのようでファンタジーでもなく。観念的なようで、実はただ回りくどいだけだったり。翻訳調的会話のキザな感じは1989年という時代のせいか。主人公は結婚しているというが、家族の気配はない。現実離れした場所になぜかいてなぜか天気作りの修行をする。ストームシーディング(嵐の種まき)はなかなかいい。比喩のうまさはさすが。思弁的な会話を読み返してみたりするけれども、どこももう分かってるよと言いたくなる。なるべくいい所を取り出したいのだが、時代に淘汰された感が否めない。これがバブル期の小説ということなのか?2013/06/20
メデスキ
0
安易に引き合いに出したくはないが、天気作りなんてネーミングをつけちまった上で、無菌豚なんての養豚していたりのファンタジーされちまうと、文章を含め春樹を想起しちまうし、何よりエンタメ的な観点でも比べてしまう。そして、春樹はストーリー作りはともかく、ファンタジー作家としては世界の冠に誠に残念ながら相応しいので、格落ちの印象を抱いてしまいますね。処女作も同時収録。
ミツ
0
第2回三島賞受賞。大岡信の息子。修飾語や比喩が普通じゃない、いい意味で変な文章。ただ表題作よりも「緑なす眠りの丘を」の方がその傾向が強くて好み。2009/01/09