内容説明
ネット上で実行部隊を集め、海外の拠点からITを使って詐欺や強盗を行わせる―こうした犯罪グループは、突然、出現したのではない。地上げ、ヤミ金融から最新の匿名犯罪まで、長年、アウトローと経済事件の取材を重ねてきた著者が、変異し続けるワルとカネの実態を暴く!
目次
序章 「デフレ型犯罪」としての特殊詐欺と連続強盗
第1章 ルーツとしての五菱会事件
第2章 バブルと地上げ
第3章 総会屋から企業テロまで
第4章 ヤクザマネー包囲網とITバブル
第5章 関東連合の六本木進出と半グレの準暴力団化
終章 特殊詐欺はどこへ向かうのか
著者等紹介
久田将義[ヒサダマサヨシ]
1967年、東京都世田谷区生まれ、神奈川県横浜市育ち。『実話ナックルズ』編集長を経て、月刊誌『選択』『週刊朝日』編集部に在籍。現在はニュースサイト運営、編集者(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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パトラッシュ
123
カネにたかるワルの系譜は絶えないが、犯罪の遺伝子は新型コロナ同様に変異し続けている。バブル期には銀行や大企業を標的としたヤクザがやりすぎて動けなくなると、デフレ期は個人や中小企業を狙う半グレによるヤミ金や特殊詐欺に移り、さらにITと暴力を組み合わせた強盗が主流となった。いわば日本の貧困化につれて、前の時代に犯罪を学んだ者が社会状況に応じてやり方を変えていく経済犯罪史の教科書となっている。ルフィ事件は最新技術を使いこなす層と使い捨ての実行犯の格差を露呈したが、今後は貧困層は犯罪すらできなくなるかもしれない。2024/07/28
skunk_c
65
読み始めてすぐに『関東連合』の著者と気づいてちょっと引いてしまったが読了。どちらかというとバブル前後からのイリーガル経済犯罪史といった趣で、取材もしているのだろうが、思ったより他書からの引用が多い印象。特殊詐欺も連続強盗も割合あっさりと取り上げられ、「デフレ型犯罪」など面白い視点や、故人だが大物政治家の話もあったが、全般には週刊誌記事の集大成のような感じで、もう少し踏み込んでもらいたいという面がいくつもあった。ただし『関東連合』のような著者の自慢話的な要素は感じなかったので、その点は杞憂だったようだ。2024/06/05
読特
34
バブル絶頂期、ヤクザの平均年収は1500万。目立てば叩かれる。暴対法が施行され、暴力団は活動を制限される。代わりに台頭してきた半グレ集団。時代も長いデフレに入る。総会屋や地上げから特殊詐欺や遠隔操作強盗へ。貪る相手は企業から個人へ、強きものから弱きものへ。金儲けの手段も環境に適応する。まるでウイルスのようにワクチンをすり抜け形を変える。犯罪集団がいなくなることはないだろう。再び物価が上昇する昨今。成長期とは違うコストプッシュ型インフレ。次はどんな手口が蔓延るだろうか。巻き込まれることがなきように願う。2024/06/15
緋莢
18
図書館本。2023年、海外の刑務所から指示を送り、連続強盗をさせていた者が逮捕された(彼らの内の一人が、某マンガの主人公の名前を使っていたので、それが出てきますが、そのマンガを好きな自分にとって、不愉快以外のなにものでもありません。また、逮捕時に、生放送で そのキャラの名前と逮捕という言葉を叫んでいた芸人も大嫌いです)著者は、その強盗事件や特殊詐欺について〝デフレ型の犯罪”、つまり<現金志向が強く、スピード重視で、素人の参入 しやすさを特徴とする>としています(続く2024/10/11
Kano Ts
14
最近の連続強盗事件について、歴史的に俯瞰して見てみたく手に取った。分かりやすくまとまっており面白かった。犯罪は“近道”という表現が腑に落ちる。犯罪の形態が変わっていると言うよりも、時代に合わせて“お金持ちへの近道”の形が変わっていると言うことなのだろう。中で書かれる犯罪の形式を見ていても、日本の経済力の低下やIT技術の負の側面をまざまざと感じさせられて少し悲しい気持ちになるが、まぁそこを嘆いても仕方あるまい。犯罪はどこまでいっても犯す人が悪いのだから。2024/11/20