文春新書<br> テクノ・リバタリアン―世界を変える唯一の思想

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文春新書
テクノ・リバタリアン―世界を変える唯一の思想

  • 橘 玲【著】
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  • サイズ 新書判/ページ数 272p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784166614462
  • NDC分類 309.1
  • Cコード C0295

出版社内容情報

そこは楽園か、ディストピアか?
シリコンバレーの天才たちが希求する「数学的に正しい統治」とは?

アメリカのIT企業家の資産総額は上位10数名だけで1兆ドルを超え、日本のGDPの25%にも達する。いまや国家に匹敵する莫大な富と強力なテクノロジーを独占する彼らは、「究極の自由」が約束された社会――既存の国家も民主主義も超越した、数学的に正しい統治――の実現を待ち望んでいる。
いわば「ハイテク自由至上主義」と呼べる哲学を信奉する彼らによって、今後の世界がどう変わりうるのか?

ハイテク分野で活躍する天才には、極端にシステム化された知能をもつ「ハイパー・システマイザー」が多い。彼らはきわめて高い数学的・論理的能力に恵まれているが、認知的共感力に乏しい。それゆえ、幼少時代に周囲になじめず、世界を敵対的なものだと捉えるようになってしまう。イノベーションで驚異的な能力を発揮する一方、他者への痛みを理解しない。テスラのイーロン・マスク、ペイパルの創業者のピーター・ティールなどはその代表格といえる。
社会とのアイデンティティ融合ができない彼らは、「テクノ・リバタリアニズム」を信奉するようになる。自由原理主義(リバタリアニズム)を、シリコンバレーで勃興するハイテクによって実現しようという思想である。
いわゆるリベラル層は、所得格差と富の偏在を不道徳とする傾向がある。だが、それは逆に言うと、「自由」を抑圧することになる。自由のない世界では、マスクやティールのような「とてつもなく賢い」人々は才能を殺され、富を簒奪されることになるからだ。
彼らは「テクノロジーによってすべての問題は解決できる」と考えている。AI、ゲノム編集技術を駆使して人類は不死を手に入れ、森羅万象を操る「ホモ・デウス」になれると確信する者も多い。
また彼らは、国家のような中央集権的な組織に依存せずとも暗号(クリプト)テクノロジーによって個人と個人をつなぎ、暗号資産をもってすべての信用決済が可能になる社会が到来するとも信じている。その行きつく先は、「暗号によって個人を国家のくびきから解放する」とする過激な無政府主義「クリプトアナキズム」である。
実際、クリプトアナキストのひとりは「反民主主義」を標榜し、「世界中の民主政治と称するものを、暗号化を利用して根底から揺るがしたい」と公言している。
「この惑星上の約40~50億の人間は、去るべき運命にあります。暗号法は、残りの1%のための安全な世界を作り出そうとしているんです」(ティモシー・メイ)
――とてつもない富を獲得した、とてつもなく賢い人々は、いったいこの世界をどう変えようとしているのか? 衝撃の未来像が本書で明かされる。

内容説明

高い数学的能力をもつギフテッドがひしめくシリコンバレー。とてつもない富を手にしたとてつもなく賢いIT成功者たちは、「究極の自由」を求めて、既存の民主主義を超越する新たな政治思想を模索している。彼らはいかに世界を変えるのか?最先端テクノロジーに裏付けられた最先端思想の全貌を徹底解説!

目次

はじめに 世界を数学的に把握する者たち
0 4つの政治思想を30分で理解する
1 マスクとティール
2 クリプト・アナキズム
3 総督府功利主義
4 ネクストジェネレーション
X 世界の根本法則と人類の未来
あとがき 「自由」を恐れ、「合理性」を憎む日本人

著者等紹介

橘玲[タチバナアキラ]
1959年生まれ。作家。2002年、国際金融小説『マネーロンダリング』でデビュー。2006年、『永遠の旅行者』が第19回山本周五郎賞候補作となる。2017年、『言ってはいけない 残酷すぎる真実』で新書大賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

KAZOO

88
橘さんの最新作で今世界を牛耳っているのはここに書かれた概念の人々であるということを説明されています。非常にわかりやすいのは「正義をめぐる4つの立場」ということで図解をしてくれています。またそれを政治思想の道徳基盤ということでどのような考え方で位置するところはどこなのかがわかるようになっています。このような人物の代表として、イ―ロン・マスクやピーター・ティールがどのような人物で若いころにどのような経験をしたかが説明されています。相変わらず参考文献が多用されています。2024/04/21

Sam

53
「自由」を巡る一冊。リバタリアニズムもリベラリズムも「ひとは自由に生きるのが素晴らしい」という信念に基づくという意味では同じ政治思想だが、現代のテクノ・リバタリアンたちはより過激に究極の「自由」を求めていく。クリプト・アナキズム始め次々と紹介される考え方はとても興味深い(としか言いようがない)。個人的に最も興味深かったのは私的所有に関するグレン・ワイルの主張。私的所有こそ自由の大前提というミル以来の原則が揺らぐ。最終章は壮大過ぎて消化できず。それでも一冊通してとても興味深く刺激的な内容だった。2024/04/10

Kanonlicht

27
イーロン・マスクがツイッターを買収し何をしようとしているのか。暗号通貨はどんな目的でつくられ、今後どうなっていくのか。これを読めば、ごく一部の数学的思考や統計学に特化した知能を持つギフテッドたちが考える人類の未来ついて知ることができる。民主主義や資本主義を見限った彼らは、真の自由を求め、「死」の超越を目指し、来るべきシンギュラリティに備えている。人格のデジタル移行や頭部の冷凍保存なんてSFのようなことが実際に行われていることに驚き、この加速する文明の将来に本当に人類の幸福があるのか、期待より恐怖を感じた。2024/04/24

はるき

19
 テック業界の天才たちは世界をどう動かすのか(大袈裟?)。突き抜けた知能は孤独と表裏一体で、巨万の富と共に終わらない不安を生み出すのか。人類が火星に到着する日は来るかもしれませんが、永遠の命や完全自由かつ自己責任の世界は多分来ないんじゃないかなぁ。やればできるの精神で道なき道を開拓し続ける精神は立派ですが、元を通せば巨万の富の源泉は庶民のニーズを拾ったから。密度の高い人生って何か辛そう…。2024/03/21

ごへいもち

16
字面を追っただけの部分も。何だか世の中は遠くに行ってしまったのね。アスペルガーのようにある種の能力がありながら社会性が無いために実力が発揮出来ないのは不幸なことだと思っていたけれどそうとも限らないと感じた2024/04/23

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