出版社内容情報
ローマと漢、二つの古代帝国の興亡は、シルクロードと深い関係にあった。ユーラシアを横断する交易に着目した、新しい壮大な世界史。
内容説明
「ローマ帝国はなぜ滅びたのか?」この問いをめぐって古来、様々な議論がなされてきた。本書は、「中央部」西アジア・インドと、「辺境」ローマ・漢をつないだシルクロード交易に着目。その実態をたどりつつ、帝国の繁栄と衰亡を論じる。壮大な古代史の幕開き!
目次
序章 ローマと漢はなぜ滅んだのか?―宮崎市定とアルバート・ヘルマン
第1章 シルクロードが運んだもの
第2章 シルクロードがもたらしたローマ帝国の繁栄
第3章 ローマが重視した砂漠と海のルート
第4章 ユーラシアを襲った変動
第5章 東西分裂へ―軍事政権・増税・異民族の侵入
終章 世界史の中のローマ帝国
著者等紹介
井上文則[イノウエフミノリ]
1973年京都府生まれ。早稲田大学文学学術院教授。京都大学大学院文学研究科博士後期課程修了。京都大学博士(文学)。専攻は古代ローマ史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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サアベドラ
34
ローマ帝国の衰亡をシルクロード海上交易と絡めて論じる新書。2021年刊。著者の専門は軍人皇帝時代。著者も認めているように、本書の主張自体は推論を重ねたものなので歴史学的に価値があるとは思えなかったが、本書で描かれている帝政前期の東方交易の有様は新鮮で楽しく読めた。この時代ですでにヨーロッパの上流階級はアジアの香料や香辛料に夢中だったようで、のちにビザンツ帝国の主要輸出品目となる絹もはるばる中国から輸入していたという。一方で輸出品ではワインなどに加えて地中海のサンゴが輸出されていたというのが意外だった。2021/12/09
Tomoichi
27
ローマ帝国と経済(シルクロード)の関係を考察した一冊。滅亡までの悪循環=交易の衰退がリンクしていてなかなか面白かった。大東亜戦争もアメリカによる経済封鎖がきっかけだから自由経済って大切ですね。また疫病についても経済を沈滞させる要因だったなど今も昔も変わりません。2022/01/10
Homo Rudolfensis
25
☆4.4 宮市氏らのシルクロード交易によって金が西アジアに流出したことで後進国である中国とローマは衰退した、という理論を批判しています。結論としては、それは間違いで、ローマ帝国はシルクロード交易によって繁栄し、それから撤退したことが衰退の大きな要因となった、と主張していますが、あくまで粗い試論だそうなので是非批判してほしい、とあとがきにあります。ただ、面白い面白い!と読んでいたため全く無防備に論を受け入れてしまい、批判はできませんでしたね…。これから読む方はどうぞそのことを頭の片隅に置いて読んでください。2022/04/09
ロビン
21
タイトル通り、シルクロード交易によって得た経済力が、ローマ帝国の隆盛と衰亡に深く関わっていたと論じた内容の本だが、様々な資料を用いて古代ローマ興亡の謎解きをするワクワク感があり、スゴク面白かった。1世紀〜5世紀間位のローマ史を簡略にまとめながら論を進めてくれるので、『ローマ帝国衰亡史』や『ローマ人の物語』の復習&補填にもなり非常に有難い。西ローマ帝国が東よりも先に滅んだ経済的な背景ー関税収入の減少と軍人・官僚にかかる経費の増加、税制の改革、東に比較して免税階級の元老院議員が多かったことーも説得力があった。2023/10/08
ようはん
20
ローマ帝国の繁栄を支えた要因としてシルクロード交易による莫大な収入があり、特に輸出入での関税による収入が大きかったという話。海のシルクロードといえば元王朝辺りの時代に栄えたイメージで、ローマ帝国の海といえば地中海ではあるがエジプトのアレキサンドリアからナイル川を登り陸路を経て紅海からインド洋に出てインドに至る交易ルートが盛んだったというのが1番興味深い点だった。2023/06/14