出版社内容情報
なぜイギリスは勝ち、日本は負けたのか。日本軍の行った「無謀な作戦」として知られる戦いを英、印の視点を交えて多角的に描く。
内容説明
英歴史家たちが「グレイテスト・バトル」に選んだ死闘。なぜ“常勝”日本軍は敗れ、連戦連敗のイギリス軍が勝利したのか。
目次
序章 かつての激戦地に立って
第1章 ビルマをめぐる攻防
第2章 失われた機会―幻の「一九四二年インド北東部進攻作戦」
第3章 インドを防衛し、ビルマを奪還せよ―英印軍の周到な準備
第4章 チャンドラ・ボースの登場と光機関の情報活動
第5章 二人の将軍の「変心」―日・英印双方の作戦計画
第6章 激突―日本軍、インド国民軍、英印軍の戦い
終章 「インパールの戦い」とは何だったのか
著者等紹介
笠井亮平[カサイリョウヘイ]
1976年愛知県生まれ。岐阜女子大学南アジア研究センター特別研究員。中央大学総合政策学部卒業後、青山学院大学大学院国際政治経済学研究科で修士号取得。専門は日印関係史、南アジアの国際関係、インド・パキスタンの政治。在インド、中国、パキスタンの日本大使館で外務省専門調査員として勤務後、横浜市立大学、駒澤大学などで非常勤講師を務める(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
skunk_c
71
著者の執筆動機が、イギリスにおいてインパール戦が「東のスターリングラード」とされ、ノルマンディより上位に位置づけられていることだそうだが、第二次大戦を通じて、イギリスが単独で防御戦を戦って勝利したのがインパールしかないということに過ぎないのでは。他はほぼアメリカに手柄持っていかれているので。したがってインパール戦自体の評価は歯切れが悪い。むしろ本書の価値はこれをビルマ戦全体に拡大し、イギリスやインドからの視点で捉え直そうとしているところ。特にINA(インド国民軍)に関してかなり詳しかったのが収穫。2021/07/30
みこ
30
悲惨な行軍ばかりが取り上げられがちなインパールの戦いについて「戦争」として検証及び評価した一冊。戦い前からのインド情勢や日英の状況を丁寧に説明しており非常にわかりやすくこの戦いが頭に入ってきた。日本側の勝手な自滅と捉えがちだが、イギリス側から見たら結構薄氷を踏む思いだったことが伺える。だが、どんなに公平に見ても日本の無意味に戦線を拡大させた戦略眼の乏しさや牟田口廉也の名誉回復には一切つながらなかった。2021/09/16
紙狸
17
2021年刊行。インパール作戦を広い文脈でとらえ直した本。インパール作戦については、日本陸軍が1944年に発動して失敗した無謀な作戦ととらえられている。それは確かにそうなのだが、日本側は無謀だったとして、英印軍側はどうだったのか。英国側の資料にあたると、英国側では「グレイテスト・バトル」と評価されている。日本軍によりビルマから追われた英軍は、反攻を準備していた。日本側が無謀な作戦にうってでたのを好機として生かして、日本側に大損害を与えた。日本側がひたすら自滅したのではなく、英国側が巧みに戦った。2024/04/23
CTC
14
7月の文春新書新刊。著者は元外務省専門調査員で岐阜女子大南亜研究センター特別研究員。専門は日印関係史。本書の価値は著者のこの経歴に基づく広い視点に尽きるというか、つまりはサブタイや保阪さんの推薦文が匂わすようなセンセーショナルな内容は含まない。本書は“インパール作戦”の本ではなく“インパールの戦い”の本であり、つまり英印の視点も取り入れつつ、先の大戦を通して印緬方面の重要性や同地を巡る戦いを追っている。この視座からじゃあ「ほんとうに愚戦だったのか」かも「もう一つの真実」も書けるわけはない。2021/07/28
まんむー
13
日本では「無謀な戦い」、英国では「最大の戦い」と言われたインパールの戦い。このインパール作戦のGOサインは東條英機が入浴中に決定したそうだ。インパールの戦いの2年前にあった「21号作戦」で敗北した英印軍はこの2年間で情報収集を始め、輸送道路の建設、医療体制の整備など勝つための準備を行なってきた。日本は食糧の補給の準備も詰めていない。作戦は中止になっても前線の兵士の戦いは終わらない。それが2万を超える死者を出し、白骨街道を作り出した。久しぶりに「ビルマの竪琴」を読みたくなった。2024/04/22