内容説明
プロ野球投手最高の栄誉のひとつ、「沢村賞」に名を残す沢村栄治。ベーブ・ルースをも打ち取った彼の全盛期はほんの二年弱だ。親族の巨額の借金、三度の徴兵、そして巨人からの非情な解雇。―自身も六大学野球で活躍した著者が描く、運命と格闘した男の記録。
目次
第1章 沢村栄治と正力松太郎―職業野球への胎動
第2章 甲子園のエースから職業野球のエースへ
第3章 ベーブ・ルースとの対決―東京巨人軍の誕生
第4章 職業野球リーグの創成
第5章 「私は野球を憎んでいます」
第6章 戦場と球場
第7章 そしてプロ野球が生まれた
著者等紹介
太田俊明[オオタトシアキ]
1953年千葉県松戸市生まれ。東京大学在学中、硬式野球部の遊撃手として東京六大学野球で活躍。卒業後は総合商社などに勤務。1988年、筆名・坂本光一で執筆した、甲子園を舞台にしたミステリー『白色の残像』が第34回江戸川乱歩賞受賞。2013年の定年退職を機に小説執筆を再開し、2016年『姥捨て山繁盛記』で第8回日経小説大賞受賞。野球に関するスポーツコラムも執筆(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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fwhd8325
65
私の世代では、沢村栄治のプレーを見ていた人がまだ沢山いて、そのすごさを何度も聞かされたものです。私の父も沢村栄治と同世代でした。沢村栄治の話を聞くこともありましたが、そこには戦死した無念の気持ちが込められているように感じました。沢村栄治に関する著作は沢山出版されていて、何冊かは読んでいましたが、年齢のせいなのでしょうか、この著書では、時折涙が止まりませんでした。2021/08/03
金吾
29
○詳しく調べていると感じますし内容はセンセーショナルで面白かったです。流布されている沢村栄治とは違う側面を見れました。2022/09/10
みこ
29
プロ野球ファンなら誰もがその名前を知るであろう、しかし、どれだけ凄い選手だったかということになるとあまり知られていない伝説の投手・沢村栄治の生涯。彼の人生を綴っただけなのにある意味究極の反戦本のように感じられた。巻き込まれた人間だけでなく、国民から娯楽そのものを奪う戦争の理不尽さはコロナ禍に通じるものもある。それでもテレビを通じれば野球を楽しむことができる平和な世の中と、野球という文化をこの世に生み出してくれた彼らに感謝の気持ちが湧き上がる。2021/05/22
Urmnaf
15
言わずとしれた職業野球草創期の大エース。大きく足を上げる美しいフォームから突出したスピードボールを投げ、懸河のドロップとのコンビネーションで大リーガーをも手玉に取った。しかしながら、プロ入りは周りの大人たちの思惑に翻弄され、必ずしも本人の望みではなかった。進学を諦めてプロ入りしたことが後々徴兵にも影響し、野球選手のキャリアだけでなく、文字通りの生命をも縮めてしまう。こうした様々な不本意さが野球に対する複雑な思いとなったらしい。そういう時代だったとはいえ、好きな野球にそんな思いを抱かせてしまうのは残念至極。2021/03/02
かっくん
10
日本プロ野球の黎明期に活躍した伝説の投手沢村栄治。彼の生涯を通じて、戦前の職業野球の歴史の変遷も描く。映像や写真もほとんど残っていないので、実際の沢村の投球がどのようなものだったか想像するしかないが、人々に鮮烈なインパクトを与えたのは間違いない。今は設備も整い、観客動員数も順調に伸びて、毎日のように野球の試合があるのが当たり前の時代であるが、沢村たちの苦難の時代については、長く記憶にとどめるべきである。2023/09/21