文春新書<br> 王室と不敬罪―プミポン国王とタイの混迷

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文春新書
王室と不敬罪―プミポン国王とタイの混迷

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  • サイズ 新書判/ページ数 224p/高さ 18cm
  • 商品コード 9784166611805
  • NDC分類 302.237
  • Cコード C0295

出版社内容情報

「不敬」が絶対的タブーとされ、海外メディアも触れられなかったタイ王室の光と影。気鋭の若手記者がタイ式民主主義の実像を描く。「微笑みの国」のダークサイドに迫る!



「親日国」で日本人にも人気のタイ。日本企業が多数進出し、温暖な気候と穏やかな国民性に惹かれてリタイヤ後に移住する日本人も多い。

だが、そんな明るいイメージの裏に、想像を絶するタブーがある。

それは「王室」だ。

ごく一般の人が、SNSに投稿した何気ないひと言によって「不敬罪」に問われる。なかには30年近い懲役を科せられている人もいるほどだ。

現在のタイの発展の最大の功労者は、2016年10月に死去したプミポン国王である。プミポン国王は第二次大戦後、王制の下での民主主義(タイ式民主主義)を推し進め、数々の政治危機から国を救った。インドシナ半島における反・共産主義の砦となったタイは、急速な経済発展を実現すした。タイを繁栄と安定に導いた王室は、次第に絶対的な存在と目されるようになった。

だが、1990年代以降、そんな王室に“対抗”する勢力が台頭してきた。タクシン・チナワット元首相である。タクシンは地方農村への援助や公共投資によって貧しい人々の心を掴んだ。王室周辺は、そんなタクシンに警戒感を強めてゆく。結局、2006年にクーデターによってタクシンは国を追われた。

しかしタクシン追放後、王室の権威はますます権力闘争に利用されるようになった。

政治家、軍部、司法の重鎮たちが、政敵を追い落とすために「反王室」のレッテル貼り争いに興じる。経済格差が進行し、国民たちも分断の度合いを深めている。

だが、不敬罪は海外メディアにも適用されるため、そんなタイの情勢は抑制的にしか伝えられてこなかった。タイに関する報道は常に核心に触れられず、読者に理解しづらいものだった。

本書は、不敬罪で投獄された人の肉声やクーデターを実行した軍部関係者のインタビューなど、深い取材によって得られた貴重な情報が豊富に盛り込まれている。これまで描かれなかった構図や背景を深く、分かりやすく描いている。

タイにおける王室とは何なのか、「タイ式民主主義」とは何だったのか……このテーマは、皇室を戴く日本人にとっても無関心ではありえない。

岩佐 淳士[イワサ アツシ]
著・文・その他

内容説明

穏やかな国民性で日本人に大人気のタイ。しかし、王室という絶対的な権威が君臨するタイ社会には、外部からは窺い知れないダークサイドがある。「不敬」のレッテルを政争の具に用いる権力者、繁栄をもたらした「タイ式民主主義」の裏で拡大する格差…気鋭の記者が真実に迫る!

目次

プロローグ 「タイ式民主主義」の光と影
第1章 プミポン治世の終末
第2章 「タイ式民主主義」とは何だったのか
第3章 タクシンは「反王制」なのか
第4章 2014年クーデターの真実
第5章 プミポン国王後のタイ
エピローグ

著者等紹介

岩佐淳士[イワサアツシ]
毎日新聞外信部記者。1976年神奈川県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。2001年毎日新聞入社。福島支局を経て06年4月に東京社会部。東京社会部では東京地検特捜部を担当し、小沢一郎氏の資金管理団体「陸山会」を巡る政治資金規正法違反事件などを取材した。10年4月に外信部に異動。12年4月から16年9月までアジア総局(バンコク)特派員。タイやミャンマーなど東南アジア各国の政治・社会のほか、中国とフィリピン、ベトナムが対立する南シナ海の領有権問題などを取材した。16年10月、東京本社に帰任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

makimakimasa

13
1782年に始まるチャクリー王朝は、1932年に絶対王政打倒も、57年クーデターが王政の権威利用で復権。兄の怪死で即位したラーマ9世は70年間在位した。平等に価値置く西洋的民主主義より、国王の世直しに基づく秩序を重んじてきた王室サークルは、金権政治と行財政改革で既得権益を乱すタクシンに反王政のレッテルを貼る。恩赦法案の強行可決、不正な情実人事、米買取制度の職務怠慢?で失脚したインラックの支持者を質の悪い多数票と蔑む都市部エリートは、公共の利益を考えないポピュリズムは足るを知る経済を否定して道徳失うと主張。2021/01/30

Eradist

12
タイでデモが起きているという記事をニュースで数年前から見かけたが、タクシン派や反タクシンなどあまり意味が分かってなかった。タイでの王室と不敬罪という文化背景的なことを知ることで、タクシンが国外追放された経緯などが腑に落ちるようになった。2020/12/01

アリーマ

11
2014年にあったタイのクーデター騒ぎの意味が、全くわからないうちに何年か過ぎていたが、本書を読んでようやく背景が少し理解できた。70年に渡る治世で名君と崇められたプミポン前国王が高齢となり、その後継となる皇太子は三度の離婚などなどの不品行で今ひとつ国民の評判がよろしくなく、かつ王政を影で操る強力な軍部の存在があり、そこにタクシン元首相の覇権と失脚が絡む…と、なんとも盛り沢山な政治体制の国だったのだな。しかも反王室的な発言には強烈な言論弾圧、という実態。まずは大まかな図式が見えて興味深く読んだ。★★★★2018/10/19

makio37

6
数年前にニュースで盛んに報じられていたタイの混迷の内実を知ることができた。「質の低い1500万人の投票より、上質な30万人の意見を尊重せよ」という言葉に、王室に連なる特権層である反タクシン派の差別意識がにじみ出ている。自分たちの支配の範囲内でのみ認められてきた「タイ式民主主義」を破壊する存在として、発展に取り残された東北の民衆に豊かさを与え支持されたタクシンを憎悪した。プミポン国王亡きあとも軍政は「タイ式民主主義」の維持を図り、民主主義に逆行する新憲法を成立させた。タイの今後が気になる。2018/09/25

OjohmbonX

4
タイは民主化すると利権政治になってしまい、それを倒すにはクーデターに頼らざるを得ず、今度は軍政になって民主化から遠ざかる、という「利権政治か軍事政権の2択」を選ばされる状況になっている。その上、抑制的で政治権力から中立であろうとした国王(プミポン)から利己的な国王(ワチラロンコン)に代替わりした結果、国王と軍政が癒着し、軍政が固定化してきている。この背景に、農村人口が多いが格差が大きく稼げていない、だから農村部が大票田になり利権政治を選挙で倒せなくなる、というかなり解決が難しい状況がある。2020/08/24

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