出版社内容情報
柔道を愛し日本の哲学書を好んで読む。バラマキ政治、衆愚政治といわれながら大国路線を突っ走る誰も知らない独裁者の実像に迫る。
内容説明
大統領に復帰し、さらなる絶対的権力者となったプーチン。貧しい労働者階級からKGB中佐を経て頂点の座に上り詰めた軌跡を追うとともに、バラマキ政治を展開し、派手なパフォーマンス、水戸黄門ばりのテレビ対話など、日本では知られていない「黒い皇帝」の素顔に迫る。
目次
第1章 カリスマの凋落(プーチンをめぐるアネクドート;ブレジネフ時代に回帰 ほか)
第2章 スパイ大統領の虚像と実像(007は殺しの番号;ソビエト版アメリカン・ドリーム ほか)
第3章 奇妙な儀式(消えたメディア;「国民との対話」の成功 ほか)
第4章 黒いプーチン(プーチンのためのサミット;究極の「お友達内閣」 ほか)
第5章 ミニ・ソ連の野望(KGBジョーク;9・11同時テロを予告 ほか)
第6章 対日柔道外交(笑わぬプーチン、大いに笑う;柔道政治 ほか)
著者等紹介
名越健郎[ナゴシケンロウ]
1953年岡山県生まれ。東京外国語大学ロシア語科卒業。時事通信社に入社、外信部、バンコク支局、モスクワ支局長、ワシントン支局長、外信部長、仙台支社長を経て退職。現在拓殖大学海外事情研究所教授。語学に強く、特にロシア語は日本のジャーナリストでは一級品。ロシア政治ウォッチャーの第一人者である(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
燃えつきた棒
37
プーチン氏が戦争を始めた。では、プーチン氏とはどんな人物なのか? 2012年、政治学者らとの会見で、「あなたに最も政治的影響を与えた歴代の皇帝やソ連共産党書記長は誰か」との質問に、彼はこう答えている。 【「ロシアの歴史は不幸にも、大半は暗く、流血に満ち、排他的なものだった。それでも、献身的な努力がなされた時期がある。アレクサンドル・ネフスキーなどがその例だ。私はネフスキーが大好きだ。次がピョートル大帝と初期のエカテリーナ女帝だ。女帝の時代にロシアは領土を拡張した。流血は少なく、領域の拡大があった」】2022/02/28
雲をみるひと
25
プーチン3選前でウクライナとクリミアの一件も起きていない10年ほど前に出版された本。プーチンの生い立ちや大統領就任までの経緯、及び初期の大統領としての振る舞い、ポピュラリストとしての側面などが詳しく書かれている。プーチンに懐疑的なスタンスが取られている。チェチェン関連の自作自演説などは流石にそれはないだろうという印象も受けるが、昨今のプーチンの言動を見るとそうだったのかもしれないとも思えてくる。今読みたいプーチン本と言えるかもしれない。2023/04/02
matsu04
18
著者は、現下のロシア体制は黒い皇帝・プーチンが絶対的権力を有する愚民政権だと指摘した上、今の地位にまでのし上がった彼の経歴を辿るのであるが、KGB時代は二流だった事実、大統領就任後の失政の数々や不正蓄財、取巻きグループの腐敗等に触れるなど、結構手厳しい。2015/07/06
ちくわん
17
2012年5月の本。現役のプーチン大統領を知るために。第三章で取り上げられた年末恒例の「国民との対話」というテレビ番組。国が変わればやり方も変わる。ここ30年のことではあるが、知らない(あるいは完全に忘れ去った)ことが多いこと。面白かった。2020/11/23
白義
15
タイトルこそ安いが、人間として、政治家としてさまざまな顔を持ったプーチンの姿を分かりやすく伝えてくれる。怖くて寡黙なイメージが何となくあるが、その高圧的強権の裏には恐れや怯えもあり、元スパイなのに劇場メディア型政治を駆使し、弱者の味方という印象を与えるすべも知っている。一方、腐敗や不正の影も色濃く、あからさまな大国志向は隠さない。冷徹と激情、緻密さといい加減さ、強さと弱さなど様々な側面が同居する複雑な人物というイメージを抱いた。孤独な独裁者とはそもそもそんなものなのかもしれない2014/07/29