出版社内容情報
易によってギリシャ悲劇を読み解くことは可能なのか。東西2大古典との対話を通じて、知らぬ間に易経の世界に親しめる最良の入門書。
内容説明
性格の異なる人びとが互いにどう反応しあうか、そのパターンを分類し、その人、その場に応じたアドバイスを与える経典『易経』。ギリシア悲劇の登場人物に易経のアドバイスを聞かせてみたら?東西思想の対話を試みる、比較文学の冒険。
目次
第1章 対話の方法(易経の構成;対話の方法;「占いの書」か「義理の書」か;予言の力?後知恵?人類の共通感覚?)
第2章 テーバイ王家の物語(オイディプス王;コロノスのオイディプス;アンティゴネ)
第3章 ヘラクレス夫妻の最期(トラキスの女たち)
第4章 トロイア戦争の物語(アイアス;ピロクテテス;エレクトラ)
第5章 ソポクレスと孔子
著者等紹介
氷見野良三[ヒミノリョウゾウ]
1960年富山市生まれ。83年東京大学法学部卒業、大蔵省入省。ハーバード・ビジネス・スクールMBA。バーゼル銀行監督委員会事務局長、金融庁証券課長、銀行第一課長等を経て、現在、金融庁総務企画参事官(国際担当)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yamahiko
17
ギリシャ悲劇、易経はともに興味はあるけれど敷居が高く入り難い分野だと思っていました。しかし、本著の平易な語り口は、そうした危惧を難なく取っ払ってくれており、的確な表現で視界を広げてくれる良書でした。2021/04/11
koji
16
先日新聞に目を通していた時「氷見野良三氏金融庁長官に内定」という記事に目が止まりました。氷見野氏は富山市出身。偶々富山に縁があり来歴を調べて驚きました。バーゼル2事務局長等国際金融を舞台に活躍、庁内きっての論客で古典に素養がある教養人と書かれています。その氷見野氏が著したのが本書。孔子の易経思想をもとにギリシャ悲劇の人間関係を解読するもの。これが国際金融の調整に役立ったようです。さらっと読めますがツボは押さえています。著者は、これをとば口に古典原典への挑戦を求めています。国際金融人のスケールは違いますね。2020/07/24
かず
5
易経関連は何冊か読んできたが、本書は着眼点が面白く手に取った。私が感じ入ったのは「トラキスの女達」と「アイアス」の章である。共に一代の英雄をもってしても群れなす小人には勝てない、ということが謳われている。顧みると、現代も、私を含め小人達が跋扈する世である。本来、民主主義というのは皆が君子を目指すくらいの気概がなければ成り立たないと考えるが、それは理想論だ。こういう時代に我々はどうあるべきか、本書p.181にはこうある。「謙虚に、やり過ぎず、正しい道から外れないように」とのこと。ありきたりだが至言である。 2014/06/15
鬼山とんぼ
4
学部は違うが著者とは同期の卒業生。迂闊にも今般、日銀副総裁に推挙されるまで知らずにいた。前金融庁長官とは恐れ入りました。私は何かと予想が好きで、ある程度は易の勉強もしていたので辛うじて付いて行けたが、ギリシャ悲劇に易の卦の解釈をぶつけるという奇想というか荒技には驚かされた。もちろん牽強付会であり、ソポクレスの描こうとした世界とは相容れない部分が多々あり、何じゃこりゃ、とは思ったが、小林秀雄の引用はじめ、窺われる著者の読書歴の広範囲ぶりには完全に脱帽である。高校時代は全国模試で3番以内ですか。なるほど。2023/02/22
波
3
東西の「闘い苦しむ人のための詩篇」を比較して論じた書。丁寧に読めば、易経とソポクレスのギリシア悲劇、東洋と西洋の古典が示す知の共通点と相違を学べる。金融庁の国際担当参事官というキャリアの著者が書いた本らしく、書きぶりは実際的。「西洋近代の直線的な因果論を、主体間の相互作用の変化の類型学である易経の発想で補完すべき時が来ているのではないか」という記述に共感。でも易経の本というよりギリシア悲劇の本ですねこれは。2017/03/28