出版社内容情報
日露戦争の勝利で頂点に立った陸軍は、なぜ昭和に入ると派閥抗争と下克上をくりかえし、ついには無謀な戦争に突入したのか?
内容説明
日露戦争で頂点に立ちながら、昭和に入るや派閥抗争と下克上をくりかえし、ついには無謀な戦争により瓦解した帝国陸軍。この典型的な日本型組織の欠陥はいったい何だったのか。参謀本部の役割、海軍との確執、統帥権問題の本質等、欧米の軍隊と比較しながら失敗の本質を問う画期的な書。
目次
第1章 戦争という芸術―参謀本部の誕生
第2章 陸海二元統帥の罠―日清戦争
第3章 外交と軍事―日英同盟
第4章 指揮官か、参謀か―日露戦争
第5章 統帥権は悪か―派閥抗争
第6章 官僚化するエリート―統制経済
第7章 組織の崩壊―太平洋戦争
著者等紹介
別宮暖朗[ベツミヤダンロウ]
1948年生まれ。東京大学経済学部卒業後、大手信託銀行でマクロ経済の調査・企画を担当。退社後、ロンドンにある証券企画調査会社のパートナーを経て歴史評論家に。ホームページ「第一次大戦」を主宰(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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skunk_c
15
在野の「歴史評論家」による陸軍史。コンパクトにまとまっているので大まかな流れをつかむのには使えるのだけど、脚注もなく十分な引用もないので、史実と著者の見解の区別が付かない。社会主義と統制経済を同一視した推論もかなり無理があり、特にマルクスをドイツ国家主義と断じるあたりは笑止。日露戦争で奉天会戦を詳しく論じ、乃木希典の現場での戦闘を評価するが、多数の戦死者を出した旅順要塞戦について殆ど触れていないのも理解に苦しむ。とにかく結論先にありきで論を組み立てているようにしか思えず、歴史書としての価値は感じない。2018/01/21
おらひらお
4
2010年初版。日本には社会主義=官僚支配の経済が全く合わないことを再確認できました・・・。あと、サラリーマン化した高級軍人たちの命令のもとに命を落としたくはないですね。ちなみに、支那事変は中国側の引き起こした戦争であるという見解でした。2013/05/14
あまたあるほし
4
現在の軍事史家で最も信頼に値する人物が別宮暖朗だ。手放しの軍礼賛を退け事実と結果の積み重ねから評価を導きだす姿勢には頭が下がる。経済という概念が深く根底に流れているところが最近の軍事ものとのレベル差を生んでいる。社会主義的な統制経済は軍民を通じ広く行き渡っていたがそれこそが大日本帝国を破壊したと指摘する。2010/05/01
nakaji47
2
昭和陸軍の暴走については軍部の体質と思想の問題から語られる事が多いが、本書は統制経済を明確に社会主義と定義し、官僚機構の肥大化と民間経済への介入、社会主義の計画経済が幻想であり、国家の為にならない事を指摘している。この点において現代日本に通じる問題提起であると言えよう。新資本主義や自由競争を、本質を理解せず格差社会と批判する事の怖さをこの本は教えてくれる。2010/06/27
ぱき
2
新書で出すのが惜しいくらい高密度でありながら容易に読めるのは筆者の史観にブレがないから。 加藤陽子を名指しで切って捨てたのにも痺れた。2010/04/28