内容説明
日中のはざまで妖しく乱舞し、無器用にもがき、遂には刑場の露と消えた「男装の王女」川島芳子。「武士道精神が消えたから、日本は滅びた」という最後の指摘は何を意味する。
目次
1 誕生から幼少時代(義和団事件と二人の父;日本での幼少時代)
2 復辟と養父(川島家と芳子;「ジャンダーク」と「支那」;孤児として;恋愛騒動と断髪;断髪男装の背景)
3 マス・メディアの中の川島芳子(『男装の麗人』と満洲―小説、映画、舞台;男装の意味するもの―新聞記事を中心に)
4 詩歌と裁判(皇后脱出から定国軍まで;「親善」への憂い;逮捕と裁判;芳子の「武士道精神」そこに読み取られたもの)
著者等紹介
寺尾紗穂[テラオサホ]
シンガーソングライター。1981(昭和56)年東京生まれ。東京都立大学中国文学科卒。東京大学大学院総合文化研究科比較文学比較文化専攻修士課程修了。修士論文は本書の元となった「評伝 川島芳子」。大学在学中から音楽活動をはじめる。06年『愛し、日々』でレコードデビュー。07年『御身onmi』でミディよりメジャーデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
スリーピージーン
15
評伝には事欠かない川島芳子だが、いまだに伝説として興味をおぼえる。目新しい事実は書いてなかったが、読後、改めて川島が気の毒でならなかった。寄るべのない人生。今の価値観なら、時代の、国家の、養父の犠牲者だと言っていいと思う。他人を利用し、他人に利用され、虚飾のアイドルには安住の場がなかった。男性ならこんなに注目されなかっただろうが、出自を利用されて人生を狂わされた人物は多くいただろう。溥儀さんもその一人かな。2021/01/24
アメヲトコ
8
2008年刊。清朝の王族に生まれ、アジア主義者であった川島浪速の養女となって日本に渡り、清朝の復活を夢見て活動した川島芳子の人生を追った一冊。「男装の麗人」としてのイメージが強く、マスメディアでも好奇の目で取り上げられることが多かった彼女ですが、後半生を見ているとむしろ女性性をしたたかに売りにしつつ男性を渡り歩きつつ活動の資金源としている印象です。日中のはざまで彼女なりに両者の和を求めるという見立ては分かるのですが、そのために彼女が具体的にどのような戦略を持っていたのかがもう一つ見えてこず、ややモヤモヤ。2024/05/23
るうるう
5
川島芳子については昔から興味があったが、センセーショナルな取り上げ方が多く、敬遠していた。しかし筆者の別の著作を読んでこの人の書くものならと、読む気になった。川島芳子本人についても多くを知ったが、当時の日中の関係についてより多くを教えてもらった。中学高校の歴史の授業ではこの時代についてほとんど学んだ記憶がない。先生はテストに出ないからと飛ばしていたように思う。メモ/「明治の行動的ロマンチシズム」:誇り高い言葉を放ったり、豪放雄大な危害を示して尊大にふるまったりする「国士風」という虚栄心。2018/03/24
bittersweet symphony
3
寺尾紗穂さんが自身の修士論文をもとに書いた川島芳子の評伝。修士論文というのは一般的に必要以上に枝葉末節が付加される訳ですが、その辺が如実に残っているのは残念ですね。文学系学部であるため歴史学的な読物としてのそれを想定して読むとちと欲求不満が残る内容ではありました。逆に評伝的な部分をもっと抑えて本書中盤のメディアにおける川島芳子イメージに関する部分をもっと充実させて書いたほうが面白いものになったのではないかと思えます。2009/05/26
富士さん
3
川島芳子という人への単なる物見高い興味から、何気ないく手にとった本を何気なく再読。丁寧に読むとなかなかの良書でした。男にとっては女、女にとっては男装の麗人。日本人にとっては中国人、中国人にとっては満洲人。軍人にとっては一般人、一般人にとってはスパイ。無数の範疇の中の、エアポケットにちょうどはまり込んだような人生、これを表現するのにエトランゼというキーワードは最も適切です。アジアは優秀な日本人に指導されるべきだ、だが日本列島に日本人は住んでいない。エトランゼだからこそ得られた秀逸な視点だと思います。2015/07/02
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