内容説明
道に生まれ、道に死す―。遊芸民、香具師、渡職人、行商人…。定住農耕社会からはみ出し、よるべなき漂泊の人生をおくった「道々の者」。その失われた民俗を愛惜こめて描く。
目次
はじめに―近世文化の残影を求めて
第1章 街道に生きる遊芸民
第2章 「物乞い、旅芸人、村に入るべからず」
第3章 ドサ回りの一座と役者村
第4章 香具師は縁日の花形だった
第5章 医薬業と呪術の世界
第6章 遊芸民を抑圧した明治新政府
まとめ 旅芸人の生きてきた世界
おわりに―「道々の者」への換歌
著者等紹介
沖浦和光[オキウラカズテル]
1927年、大阪府生まれ。東京大学文学部卒業。比較文化論、社会思想史専攻。桃山学院大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Hiroki Nishizumi
7
民俗学の内容より自らの経験、体験記の方が多いのではないか、という所もあるが、まあまあ興味深く読めた。浪速クラブには是非とも行ってみたいと思った。2014/07/03
つちのこ
6
古来から被差別民とされていた旅芸人や香具師。そのルーツを探り、寅さんや『伊豆の踊子』を例にとった分かりやすい持論の展開を興味深く読むことができた。 私が生まれた昭和30年代は、正月には獅子舞が家にやってきたし、縁日では猿回しやバナナのたたき売りを見ることができた。商店街の売り出しではちんどん屋がチラシを配り、そのあとを追っかけて隣町まで行ってしまい、迷子になって、母に迎えにきてもらった苦い思い出がある。 こうした風習(人々)はどこにいってしまったのだろうか。 今となっては古き良き時代が懐かしい。 2021/02/15
雲をみるひと
6
旅芸人含め各地を回遊する職種をテーマに、自身の見たものや経歴、職種の分類、成立過程および消滅した原因の考察まで含んだ沖浦和光の集大成のような本。大きなテーマとしては同一カテゴリーだが、詳細まで落とせばかなりバラエティに富んだ内容でややまとまりに欠ける。また、従い自身の別の著作の引用も目立つ。 ただし、どのテーマもよく研究されており読み応えがある。そして、あまり一般的でない本テーマをここまで纏めたことに感服したい。 2018/06/04
Galilei
4
「遊芸かせぎ人」と、明治以降に鑑札を政府の発行で芸人が公認になったが、抜け目なく登録料が取られたと桂米朝さんが枕で。古典落語の「不動坊」では巡業先で病死した講談師の貧しさが如実に。また「厄払い」では本書の角付けの様子が分かります。▽筆者の思い出の神社は、私の旧家の地域は氏子で、懐かしくもあり、またお化け屋敷や露店・テキヤの衰退は筆者と同感です。それでもお化け屋敷のような小屋は、桜の通り抜けでの思い出が。TVですっかり芸人さんは変わり、師匠に付かない中堅若手芸人さんには口伝はなく、本書は将に化石でしょう。
tecchan
4
遊芸人、香具師など、現代では消えてしまった職能の人々を著者が若かりし頃からの思い出とともに、その歴史などを綴る。芸を通して庶民を喜ばすこうした人々が、被差別民とされ、時の権力者から弾圧を受けてきた歴史を振り返ると複雑な気持ちとなる。2017/04/16