内容説明
「IT革命」とは通信技術の飛躍的進歩という現象を表す言葉に過ぎない。問題はその結果を人間がどう生かせるかである。能天気な政治家や技術者たちは、「革命」が起きさえすればすべてが解決し、バラ色の未来が待っているかのごとく夢想しているようだが、愚かなことだ。「革命」の成果を、われわれの生活を本当に豊かにするために使うにはどうしたらいいかという視点なくしては、「IT革命」は共産主義革命の二の舞を演じることになるだろう。
目次
第1章 IT革命で何が変わるか
第2章 ITの普及を見通す
第3章 消費者向けのeコマースは伸びるか
第4章 ITで企業はどれほど変わるか
第5章 IT革命は永くは続かない
第6章 生活、社会にとってITとは
第7章 ITは私たちを幸せにするか
著者等紹介
森谷正規[モリタニマサノリ]
1935年、朝鮮生まれ。東京大学工学部卒業。日立造船、野村総合研究所、東京大学先端科学技術研究センター客員教授などを歴任後、現在、放送大学教授。専攻は現代技術論。著書に『日本・中国・韓国産業技術比較』(東洋経済い新報社、大平正芳記念賞受賞)、『文明の技術史観』(中公新書)、『21世紀の技術と社会』(朝日選書)、『アメリカと違う日本のIT革命』(毎日新聞社)など
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Naota_t
2
★3.0/個人PCが一般家庭にも普及し始めた2001年上梓。題名の通り、著者はITに懐疑的だが、完全に将来を見る目がなかった、と言わざるを得ない。「IT万能論が蔓延っているが、踊らされてはいけない」(p183)が彼の考えを凝縮している。孫正義や安宅和人が本書を読めば鼻で笑うだろう。EC販売は一般に広まらない、ITの経済影響はすぐに頭打ち、財布からお金を出すのは気持ちがいいのでキャッシュレスは普及しないなど、結果論で恐縮だが、著者が「虚妄」としか見えない。当時の考えを知るには、本書も価値があるかもしれない。2022/06/22
有沢翔治@文芸同人誌配布中
1
IT革命と呼ばれてかなり経ちます。IT革命は果たしてばら色の未来をもたらしてくれるというけど、本当にそうなのか? 結論はタイトルで示されているように懐疑的。https://shoji-arisawa.blog.jp/archives/51224644.html2011/04/18
yes5&3
1
再読。AI,IT,5Gで世の中が大きく変革すると言われている2020年に20年前のIT革命はどうだったかの振り返り。Amazonはeコマースにしては中抜きしていない、と投資家に疑いを持たれている。倉庫を保有する、物流に参入するのは魅力がない。ソフトバンクはベンチャーキャピタルとして評価されているP154。通信事業会社ではない。将来を見渡せる経営者の慧眼には投資家の理解は及ばない、ということ。残念なのはiモード。スマホがない時代に、充電の手間を日本は気にし過ぎた。2020/01/31