目次
潰れた鶴
金襴緞子
眠る盃
「あ」
伽俚伽
噛み癖
夜の体操
宰相
字のない葉書
桧の軍艦〔ほか〕
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あじ
58
毎日を丁寧に過ごされていた方だと、お見受けします。川の水のように流れて行く日常を切り抜き、膨大なスクラップで埋め尽くされていたであろう、向田さんの心のアルバム。さやさや思い出を語り、からから思い出し笑い。時にしくしくちくちくと、心で泣いて抱きしめる。ちゃぶ台を囲んで食後のお茶一杯。湯気の向こう、瞳を輝かせた向田さんがすぐそこに見えます。本書は『眠る盃』として文庫になっています。2015/01/24
すだち
42
絵本で読んだ「字のない葉書」を読みたくて。末の妹は小1、父は暴君で照れ屋。文字数の少ない絵本はページをめくるごとのドキドキ感があるし、原作は人物像や背景を補完してくれる。どちらもいい。 「ツルチック」「中野のライオン」が面白かった。昔は読者が作家の自宅に電話したり、手紙を送るのも普通だったのですね。何十年も経って真実がわかるのは物書きさんならではでドラマチック。犬猫への愛情も半端ではなく、お茶目な部分も垣間見える。向田さんの文はさくさく切れ味が良く、無駄のなさが心地よい。2022/12/04
禿童子
29
巻頭の『潰れた鶴』は小学生の頃に折り紙が一番に折れた著者が他の子の面倒を見ていて、自分の折った鶴が踏みつぶされて、結果としてびりっけつになったエピソードから始まる。この性分はその後も「呪い」のように著者につきまとい、「ああもう間に合わない」という良縁に巡り合えない諦観に至る悲痛なエッセイ。末尾近くの『鹿児島感傷旅行』は転勤族で故郷のない著者が「故郷もどき」として小学生の一時期を過ごした鹿児島市内の同級生と恩師を交えた同窓会に出た話で突然人生が終わる数年前の心温まる時間に慰められる。昭和の佳き女性の面影。2020/11/17
ごま
9
母がドラマを好きだった。だから若いうちは、向田さんはまだ早いだろうとずっと思っていた。時期が来たのかこの秋すうっと吸い寄せられるように選んだのはエッセイ。時代が過ぎてややイメージ出来ないこともあるが、文面を追うごとにこの魅力的なお姉さんと直接お喋りをしている気分になる。もっともっと読んでみよう。素敵な女性の証を丁寧に辿りたい。2016/11/20
ぐうぐう
6
彼女のシナリオがそうであったように、エッセイも書くごとに巧みさが増していくようだ。それでいて、どこか初々しさが滲み出ているのは、彼女のエッセイには、どれも愛嬌が感じられるからなのかもしれない。悩みに悩み、収録にも間に合わないこともあったとされるシナリオの遅筆は有名だが、エッセイは嬉々として彼女が楽しみながら書いている様子が目に浮かぶ。そんな軽やかな、しかしうまさが光る、第二エッセイ集。2010/04/16