出版社内容情報
一庶民の市政に対するドン・キホーテぶりを活写した火野葦平氏の『糞尿譚』から、氷原で激突する男の闘いを描く寒川光太郎氏の『密猟者』まで第六~十回受賞の六篇
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
313
「鶏騒動」のみ。作者の半田義之は何冊かの小説を上梓しているが、今ではほとんど忘れられた作家だろう。戦後も国鉄職員の傍ら創作活動を続けていたようだ。本編は1939年の作。日本が間もなく太平洋戦争に向かっていく少し前だ。小説は小さな村(所在地は明かされない)を舞台にしているために、まだ戦争の影は薄い。主人公は、婆さん(名前はなく、作中でこう呼ばれている)と亡命ロシア人のドナイフ。二人の奇妙な交情を描くが、そのコミカルなタッチが、つかの間の平和を享受するかのごとくである。そのあたりが評価の対象になったのだろう。2016/04/02
遥かなる想い
155
「鶏騒動」:第9回(1939年)芥川賞。 昭和初期の小さな村での ロシア人ドナイフと 婆さんの奇妙な心の交流を描く。 戦争前の ロシア人との微妙な関係が 新鮮である。強欲な婆さんの存在感が 強く、微笑ましい。戦争前の平和なひと時の 物語である。2018/07/30
kaizen@名古屋de朝活読書会
86
【芥川賞】火野葦平「糞尿譚、中山義秀「厚物咲」、中里恒子「乗合馬車・日光室」、長谷健「あさくさの子供」半田義之「鶏騒動」、寒川光太郎「密獵者」。記憶では誰も読んだことがないかもしれない。過去を知り、現在を考えれば、未来を思うことができるのかもしれない。2014/04/01
Haruka Fukuhara
9
所収の小説はどれもあまりわからなかった。芥川の精神を持った芥川賞作家って一人でもいるんだろうか。巻末の各人の年譜が少し面白かった。2017/02/25
sashawakakasu
6
厚物咲をどこかで読んだことがあり2回目でしたが、こんなにおもしろかったかしら?となりました。時間が人をとんでもなく変えるということは、頭ではわかっていてもなかなか受け入れられない、ということでしょうか。教師という職業の大変さを感じる作品も収録されておりました。2022/02/19