出版社内容情報
弱冠二十三歳で芥川賞を受賞し、以後鮮烈で衝撃的な作品を書きつづけてきた作家の全短編を集成。美しい装幀の全五巻本の第一巻
内容説明
「夏の流れ」で鮮烈なデビューを飾った著者二十代の研ぎすまされた短篇。芥川賞受賞第一作の「雪間」ほか、鋭利な刃物を思わせる十篇を収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ももたろう
10
人工中絶について考えさせられる内容だった。貧乏な夫婦。夫は生活のことを考え堕胎という決断をする。妻は堕胎せず共働きで何とか金を稼ぎ産みたいと思っているが、夫の意見を渋々受けいれ堕胎を決断する。この事実が、回り道なく、淡々と描写されていて、まさに読むものに《中絶》という人間の行為について、リアルに差し迫ってくるものだった。「夏の流れ」と同様に、これも健二の「問いかけ」だと思う。命について、考えさせられる。また、男と女の考え方の違いも、印象的だった。登場人物以外の人間は中絶を重く捉えていなかったのも印象的だ。2015/09/13
あかほ
0
三浦しをんさんがインタビューで丸山健二さんについて話しているのを読み、興味を持ったので、まずは短編集から。表題作が特によかった。テーマは生々しいながらも、語り口は恬淡としていて、それがかえって余韻を残す。2013/05/04
かがみん
0
初・丸山健二は短編集成から。芥川賞受賞作「夏の流れ」直後の作品「雪間」を始めとする計10編収められている。およそ作者に創作の主題があるとすれば、丸山の場合「生」なのではないかと感じた。各作品では「死」を扱ったものや、それに至る過程である「生活苦」を描いたものが多いが、死のネガティブなイメージよりも裏返しにある「生」を反対側から強調するものという捉え方が正しいように思われる。なら、主題は「生と死」ではないのか。単純に断じ難い書き方が丸山健二にはある。私はそう感じた。2013/05/09