出版社内容情報
京都にある味噌製造会社につとめるわたし。ある冬の寒い朝、出勤すると社内のあちこちでささやかされる噂にになつかしい名前を聞く。
「亡くならはってん、黒野田さん」
かつてわたしが心のなかでこっそり「ソリティアおじさん」呼ばわりしていた人が死んだ。
「火事やってんて」
ひょんなことからソリティアおじさんの通夜に参列したわたしは、ずるずると交際の続く恋人、将来の見通しのたたない仕事、それぞれに踏ん切りをつけるためある決断を下す。
軽妙な京都弁で女性の内面を鮮やかに描き、誰にでもある変わらぬ日常におとずれる些細な変化こそが、人生の行き先を変える様を控えめに、けれど確かに物語る胸に染み入る傑作小説。
ソリティアのように無数の選択肢がある人生で、わたしが選んだ次の一手。クリアとなるか、手詰まりか。
【目次】
内容説明
心のなかでこっそり「ソリティアおじさん」呼ばわりしていた人が死んだ。通夜に参列することになったわたしは、その死を通じて自分の人生を見つめなおす。やり直しのきかない現実を前に、わたしは変えることと変えないことを選び取る。よどんだ人生にあたらしい一手をもたらす決断と成長の物語。第175回芥川賞候補作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
215
第175回芥川賞候補作・受賞作第三弾(3/5)、今回も候補作です。ソリティアおじさんを巡る群像劇、面白く読みましたが、本作では、文藝春秋社刊であっても、受賞は難しいと思います。昔、私もソリティアをやりましたが、嵌ったことはありません(笑) https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639214192026/07/26
青乃108号
199
世の会社には一定数、ソリティアおじさんが存在するのだろうか。前々職の設計事務所にも1人、それは居た。彼は営業の管理職だったから皆見て見ぬふりをしてたけど。この本では老舗の味噌店、その事務所にそれはいた。定年でおととし退職したらしいが。直売の店舗担当の女性の関西弁の1人語りで進行するこの話。その日出勤した彼女はソリティアおじさんが亡くなったと聞く。以前、味噌チョコの開発でお世話になった彼女は通夜に参列する。彼はそして俺の上司は何故、毎日何を考えて事務所でソリティアをしていたのですか。辛くはなかったんですか。2026/09/04
となりのトウシロウ
99
芥川賞候補作ということで読んでみた。主人公は京都の老舗の味噌製造会社に勤める30代女性「古井瀬」、かつて、こっそり「ソリティアおじさん」と呼んでいた黒野田さんの訃報が入り紆余曲折の中で古井瀬がお通夜に参列することになる。故人の死や過去の記憶と向き合い、人生を見つめ直すというストーリーなのだが、私とは合わなかった。結論から言うと本作で何を言いたいのかがよく分からなかった。文章も行間がなく、描写もどういう状況なのかが想像しづらく、少し読みづらい。やっぱり私が、芥川賞との相性が悪いのかも。2026/09/19
buchipanda3
89
「お話ししたことないひと見つけて、目えつけてたんですよ」。何気ない一言にクスッとなったり、ハッとなったり、安堵したり。どこか人の機微を感じさせる会話がリアルだなあと思った。それは語り手の意識の流れをそのまま受け取っているかのように感じたからかもしれない。人は一日中、自分の内と外の言葉に塗れながら迷い続け、考えが手詰まりとなることも。そんな時はソリティアみたいに手札を戻せば良いのか。戻し続けるのか。「人生が行き詰まるのではない、人間の思いが行き詰まるのです」。誰しもの人生は独りのゲーム。読後感の良さが残る。2026/07/14
シナモン
81
味噌製造、販売会社で働く主人公は定年を迎えて今は会社にいない黒野田さん(ソリティアおじさん)の訃報に接し、通夜に出かけるが、風邪をひき、彼氏と別れるーそんなお話。読みやすい。文學界2026/5月号にて読了2026/06/30




