出版社内容情報
京都にある味噌製造会社につとめるわたし。ある冬の寒い朝、出勤すると社内のあちこちでささやかされる噂にになつかしい名前を聞く。
「亡くならはってん、黒野田さん」
かつてわたしが心のなかでこっそり「ソリティアおじさん」呼ばわりしていた人が死んだ。
「火事やってんて」
ひょんなことからソリティアおじさんの通夜に参列したわたしは、ずるずると交際の続く恋人、将来の見通しのたたない仕事、それぞれに踏ん切りをつけるためある決断を下す。
軽妙な京都弁で女性の内面を鮮やかに描き、誰にでもある変わらぬ日常におとずれる些細な変化こそが、人生の行き先を変える様を控えめに、けれど確かに物語る胸に染み入る傑作小説。
ソリティアのように無数の選択肢がある人生で、わたしが選んだ次の一手。クリアとなるか、手詰まりか。
【目次】
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
シナモン
74
味噌製造、販売会社で働く主人公は定年を迎えて今は会社にいない黒野田さん(ソリティアおじさん)の訃報に接し、通夜に出かけるが、風邪をひき、彼氏と別れるーそんなお話。読みやすい。文學界2026/5月号にて読了2026/06/30
buchipanda3
72
「お話ししたことないひと見つけて、目えつけてたんですよ」。何気ない一言にクスッとなったり、ハッとなったり、安堵したり。どこか人の機微を感じさせる会話がリアルだなあと思った。それは語り手の意識の流れをそのまま受け取っているかのように感じたからかもしれない。人は一日中、自分の内と外の言葉に塗れながら迷い続け、考えが手詰まりとなることも。そんな時はソリティアみたいに手札を戻せば良いのか。戻し続けるのか。「人生が行き詰まるのではない、人間の思いが行き詰まるのです」。誰しもの人生は独りのゲーム。読後感の良さが残る。2026/07/14
ヘラジカ
36
語りも設定もテーマも至って平凡。思考にも文章にも文学的な衒いは一切なく、実在する人物の日常をそのままトリミングしたようにナチュラルである。ここまで来ると”ありきたり”を超越している。普通から外れた異質な人々を描きがちな現代純文学のなかでは、むしろ異彩を放っている作品。ちょっと凄い。凡庸な人生、凡庸な出来事、凡庸な悩みと選択を、終始徹底して描いているからこそ、この作品自体は決して凡庸ではないのだと感じた。2026/07/08
nekomurice
4
ソリティアおじさんの訃報をきっかけに主人公の日常・心情が淡々と描かれているんだけど、ソフトな京都弁と適度な間隔で放たれる語尾の「知らんけど」が良かった。味噌チョコ美味しそう。2026/07/12
真琴
2
第175回芥川賞候補作品(文學界2026年5月号にて読了)2026/06/23
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