出版社内容情報
「ウイルス」と聞いてたいていの人が連想するのは「悪い」ことだろう。
人間に感染して病気を引き起こし、障害を残したり、命を失わせたりする。コロナウイルス、インフルエンザ・ウイルス、エボラ・ウイルスらは最悪の嫌われ者だ。
だが、地球には人類からすれば「善良な」ウイルスもいることをご存知だろうか。
ワクチンに使われているウイルスや、がんの腫瘍細胞だけに感染して死滅させるウイルスといったものがいる。
そして本書の主人公が、「ファージ」ことバクテリオファージだ。
彼らは細菌(バクテリア)に感染して殺すウイルスである。
細菌とウイルスの違いがよくわからないという方もいるだろう。ひと言でいえば、細菌は細胞からできている「生物」だが、ウイルスは最も簡単な場合、DNAをカプセルで包んだだけの存在で、生物とは言い切れない。
病原菌を殺してくれるウイルスがいるなら、医療に役立てられないか、と考えるのは自然なこと。20世紀初頭、ファージの発見者デレーユはこれで赤痢を治療できると示して、ファージ療法は一躍大流行したのだ。
ならばなぜ、現代ではファージ医療をほとんど誰も受けられないのか? 微妙な配合が必要なファージより簡単な治療薬として抗生物質が発見されたことが革命を起こし、西欧世界ではファージは忘れ去られたのである。
しかし、ファージ研究がわずかに続けられている場所があった。それは鉄のカーテンの向こう側、共産圏ジョージアだった……。
100年近くにわたり営々と忘れられた研究をつづけていた古めかしい研究所に、著者は足を踏み入れる!
数奇な運命をたどったファージ研究の歴史。そして今、次々現れる抗生物質耐性菌や不可解な難病への切り札として再び脚光を浴びるファージ療法の最前線、さらに科学におけるファージの絶大な貢献度まで……。
人類が避けては通れない病との戦いに不可欠な必須の知識。
そして何より、歴史に埋もれた異端の科学者たちの数奇な物語が、読み物としても抜群に面白い。
「善良なウイルス」の全貌を明かす決定版の傑作ポピュラー・サイエンス!
【目次】
内容説明
人類最大の脅威への切り札。それは、共産圏ジョージアでひそかに研究されていた…。抗生物質が効かない細菌を倒すウイルス“ファージ”のすべてを解き明かす科学ノンフィクション。
目次
序章 目に見えない味方
第一部 最初のファージ(水の中にあるもの;微生物の中の微生物;大ファージ戦争)
第二部 忘れられたファージ(スターリンの薬;ファージ対ナチス;パラレルワールド)
第三部 ファージ・フィーバー(寒い部屋からの復活;信念を貫く;窮地を救うファージ;渇望は募る;ファージの第三世代?)
第四部 礎となるファージ(生物学の「原子」;プラネット・ファージ;いにしえのテクノロジー;自分のファージを見つけよう)
第五部 未来のファージ(ファージ療法2.0;グレイグー)
エピローグ 新しい人生観
著者等紹介
アイルランド,トム[アイルランド,トム] [Ireland,Tom]
サイエンス・ジャーナリスト、「ザ・バイオロジスト」誌(ロイヤル・ソサエティ・オブ・バイオロジーの刊行誌)の編集者。カーディフ大学で生物学の学位を取得後、ロンドンのプレス・メディア・トレーニングでジャーナリズムの修士課程を履修。「BBCニュース」「ニュー・サイエンティスト」「オブザーバー」などで執筆、多くの科学者にインタビューしてきた。2021年ジャイルズ・セントオービン・ノンフィクション賞を受賞
野中香方子[ノナカキョウコ]
翻訳家。お茶の水女子大学文教育学部卒業(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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