出版社内容情報
玉照院の師弟は〝やんごとなき秘密〟を抱えていた――
天明飢饉の傷痕いまだ癒えぬ比叡山延暦寺に、失敗すれば死といわれる〈千日回峰行〉を成し遂げようとする二人の仏僧がいた。
歴史に名を残すための闘いは、やがて業火となり叡山を飲み込んでいく。
【目次】
内容説明
玉照院の師弟はやんごとなき秘密を抱えていた。天明飢饉の傷痕いまだ癒えぬ比叡山延暦寺に、失敗すれば死といわれる千日回峰行を成し遂げようとする二人の仏僧がいた。歴史に名を残すための闘いは、やがて業火となり叡山を飲み込んでいく―。異形の本格歴史小説。第32回松本清張賞受賞作。
著者等紹介
住田祐[スミダサチ]
1983年、兵庫県生まれ。会社員。2025年、本作『白鷺立つ』で第三十二回松本清張賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
161
今年の松本清張賞受賞作という事で読みました。比叡山延暦寺を舞台とした飯伏銀の物語、千日回峰行を巡る生と死の愛憎劇、歴史小説にしてミステリアス、松本清張の二大要素を融合させた受賞も納得の秀作です。今年のBEST20候補としました。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639201462025/10/21
パトラッシュ
131
先日YouTubeで酒井雄哉師の千日回峰行の動画を見た。極限まで肉体を痛めつけた末に悟りを求める苛酷な修行だが、相当な覚悟と意志がなければ達成し得ない。その壮絶な行に失敗即死が当然だった江戸時代に挑んだ2人の僧を描く本書は、通常の歴史小説にはない無限の哀しさに満ちている。いずれも天皇の血を享けたが故に叡山に押し込められた彼らが自らの生きた証を刻み込もうと命を賭ける姿は、生まれた意味を追求する人の業が最高の美しさを示す瞬間なのだから。権力者や殺人者の愚行を目にする度に、魂を鍛えようと願う心を考えさせられる。2025/10/03
hiace9000
100
延暦寺で千年の歴史を刻む苦行「千日回峰行」。満ずれば大阿闍梨の称号を得、失すれば死を免れぬと云う。白鷺(はくろ)とは行に挑む真白の浄衣に身を包んだ僧の姿。出自に秘密を抱えた僧・恃照が、故あって預かった面倒で厄介な弟子・戒閻。数奇な運命に縛られた両者の反目は、合わせ鏡のようでもあり同族嫌悪とも呼べる。互いの嫌悪は須らく憎悪へと転じ、自らの存在を確かめる命を賭した修行に身を投じることに。両者の独善と業火に焼かれるような怨嗟の果てに見えたものとは―。現から離れた叡山の行を静謐で濃密な筆致で描いた松本清張賞作品。2025/10/02
クリママ
44
寛政年代、叡山の千日回峰行。700日厳しい山道を7里半巡り続け、その後9日間、断水・断食・不眠・不臥で真言を唱え続ける「堂入り」をし、300日の京大廻りなどを経て大行満大阿闍梨となるが、頓挫すれば自害する。この千日回峰行から始まる物語は、解脱した僧の話ならば穏やかであるに違いないという思い込みを覆し、初めから緊迫感に満ち、その流れに飲み込まれる。帝の血に繋がる座主。高僧は蓄財に励む中、出生が秘められた師弟の千日回峰行を巡る凄まじい憎悪とアイデンティティを求める執念。思いもよらぬ結末に涙が止まらなかった。2025/10/02
土筆
8
「大阿闍梨」。比叡山延暦寺にて、失敗すれば死という「千日回峰行」を成し遂げることで得る称号。やんごとなき血を持ちつつ寺で身分を隠して生きる2人の僧が順に挑む。寺の修行とはもっと、善行や問答、精神統一など、徳を得るためにされるものだと思っていたが、今回は尊き血に対するエゴ。他の人も人間味丸出し。寺が舞台で言葉も堅く重くわからずなんとなくで読んだ所もあったが、たまにはこういうのも面白かった。2025/10/15
-
- 和書
- 幸せになる歯科のチカラ




