出版社内容情報
第173回芥川賞候補作
英会話教師として日本で就職したブランドンは、アポロ11号の月面着陸計画の記録を教材に、熟年の生徒・カワムラとレッスンを続ける。
やがて、2人のあいだに不思議な交流が生まれていく。
日本に逃げたアメリカ人と、かつてアメリカに憧れた日本人。
2人の人生の軌道<トラジェクトリー>がすれ違う時、何かが起きる――
アメリカ出身の作家が端正な日本語で描く、新世代の「越境文学」
ニューオーリンズにフォークナーと小泉八雲の残影を見る珠玉の短編「汽水」併録
【目次】
トラジェクトリー
汽水
内容説明
第173回芥川賞候補作。日本に逃げたアメリカ人と、かつてアメリカに憧れた日本人。2人の人生の軌道がすれ違う時―。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
188
第173回芥川賞候補作第二弾(2/4)、グレゴリー・ケズナジャット、2作目です。少し軌道(トラジェクトリー)のずれた二人の群像劇、芥川賞受賞の軌道からは、少し離れた感じでした。候補作にて表題作よりも「汽水」がオススメです。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639201222025/08/10
hiace9000
106
「うまい」なぁと。著者その人はじめ、よく似た境遇の人であるらならばどこかしら持ち合わせるであろう、言語が形づくる人間性の不思議や言語文化の妙を、第二言語で実に精妙に綴り描く。本作のみならず『鴨川ランナー』でも同様の寄る辺なき己の"漂流感"を、文学に昇華してみせるセンスは圧巻。意図的に微妙なる違和感をまぶした言語表現まで含めた「うまさ」にも一流の才を感じる。表題作『トラジェクトリー』にしろ、収録の『汽水』にしろ、作品主題の芯を食ったタイトルも絶妙に「うまい」。色濃く匂う私小説感に著者の寂寥と郷愁が滲むよう。2026/10/09
たま
84
「トラジェクトリー」英語学校で教えるブランドンの視点、このブランドンが何とも覇気がなく、経営者のダイスケも生徒のカワムラさんも魅力がなく、戸惑いながら読んだ。100頁ほどですぐ読めたから最後まで読んだが、最後まで読むと、カワムラさんの書いた作文が妙に心に残り、この嫌味な退職者の内面に触れた思いで心がざわざわした。「汽水」は日本の大学に「ネイティブスピーカー」として雇われているアメリカ人がニューオーリンズの会議に行く話。そこで逢った同じ境遇のアイルランド人の言う、小さいハーンの話が可笑しかった。⇒ 2025/12/09
ケンイチミズバ
77
講師の契約更新を悩みながら棚上げしている。ここが自分の居場所なのだろうか。生徒の男はリタイヤし行き場のないまま、目的なく通い続ける中高年。アメリカ人英会話スクール講師と男とも漂う者同士だ。そして認めたくない。男はしかし、結論を出す。もう来ない。ここじゃないと。スクールのコンセプトはグローバルな意識を持つ学生やサラリーマンや子供をグローバルな人材にと考える親がターゲットだった。地方都市でそれはかなわず、スクール自体がモラトリアムだ。著者お得意のこの寂寥感の描き方がうまいがそろそろ違うジャンルに期待したい。2025/08/12
こなな
60
アメリカから英会話教師として日本で就職したブランドンは夕方の人通りで特有の寂寥を感じる。そして自分だけのもので、勝手に入られないスペースがあると落ち着くことを知る 。自分の居場所がないことを感じているのだと思う。ブランドンは街から出たことは一度もないドメスティックな人間とされている熟年の生徒カワムラとアポロ11号の月面着陸計画の記録を教材にレッスンをする。2人の正反対な人生の軌道が交合う。併録されている短編に日本に帰化し小泉八雲となったパトリック・ラフカディオ・ハーンの残影。汽水というタイトルが秀逸。 2025/09/09




