出版社内容情報
植物や花、虫やさまざまな生き物が乱舞する、色鮮やかで心躍る「子供の世界」へ!
二人の少年が川原で拾った、怪我をした犬の命運は。(「心臓」)
子供が飲み込んでしまったスモモの種はいつ出てくるのか。(「種」)
「穴」で芥川賞を受賞して以来、独自の小説世界を築いてきた小山田浩子さん。近年では海外に招かれる機会も多く、「日本発のマジックリアリズム」の旗手として注目を集める著者が、言葉の奔流のような文体と、顕微鏡をのぞきこむような高精細な描写で「子供の世界」に挑む9篇。
子供の世界へ身体ごとダイブし、子供が見るように世界を見る、唯一無二のカラフルな小説集。
内容説明
従兄の結婚相手に勉強を教わる僕のかたわらで、ヤゴとメダカが成長する(「はね」)二人の少年が川原で拾った、怪我をした犬の命運は。(「心臓」)子供が飲み込んでしまったスモモの種はいつ出てくるのか。(「種」)―日常の些細な出来事がきらきらと輝きだす、9篇の色あざやかな「子供の世界」。
著者等紹介
小山田浩子[オヤマダヒロコ]
1983年、広島県生まれ。2010年、「工場」で第四十二回新潮新人賞を受賞しデビュー。2013年、『工場』で第三十回織田作之助賞を受賞。2014年、「穴」で第百五十回芥川龍之介賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
153
小山田 浩子、4作目です。本書は、バラエティに富んだ子供の世界の連作短編集でした。オススメは、『心臓』&『種』&表題作『ものごころ』です。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639194232025/03/09
ケンイチミズバ
71
ヤゴの孵化に少年は感動した。翅に障害を持ったトンボは飛び立つことができて安堵する。著者は酷い終わり方をさせているが。私も子供の頃に昆虫トラウマがある。田舎の従弟たちにお願いしていたクワガタでなくがっかりしたものの、オニヤンマだし、立派なキリギリスをもらい喜んだ。勢い両親に「ほらっ!」とオニヤンマの翅とキリギリスの後ろ足をつかんで見せた瞬間、キリギリスがオニヤンマの顔を齧り、びっくりして両方とも落とした。顔のないオニヤンマが地面でのたうち、片足のもげたキリギリスは優々と逃げた。またも細部の描写が際立つ作品。2025/02/25
けえこ
23
当事者だったり、親目線だったり、子供の世界を描いた短編集。 第一話と最終話、小学校から中学にかかる年齢、エイジと宏の話が印象的。 犬を介して部分的に仲が良いけれど、年齢が上がるにつれ交わることが減って行く友人。懐かしい気持ちを思い出す作品だった。2025/04/23
ここぽぽ
22
短編集。「心臓」と「海へ」「ものごころごろ」がよかった。改行が少なく、読むのが大変だが、端的で核心を突いた描写がシンプルで心に刺さる。淡々と出来事を会話文とともに混ぜてすすめていく。日常の不条理な部分がサラリと流れるように感情移入せず読めた。2025/03/15
いちろく
21
文芸誌に掲載された短編をまとめた一冊。様々な環境下における学生のある時期を切り取った内容と書こうか? 段落が少なく独特な句読点の使い方が目を引く構成。著者のエッセイではそんな印象を受けないので、小説独特な作風なのかもしれない。作品によっては時間の流れすら数行のうちに経過していく。描かれ方は同じなのに、単純に合う合わないという印象すら作品によってバラバラ。そんな差異すら全体を俯瞰した時に、作品がつくる面白さにも思えたから不思議だ。2025/04/05