出版社内容情報
嫌な気分は何もかもノートにぶちまけて、言葉の部屋に閉じ込めなさい。
尊敬するセミ先生からそう教えられたのは、鬼村樹(イツキ)が小学五年生の梅雨時だった――
「架空日記」を書きはじめた当初は、自分が書きつけたことばの持つ不思議な力に戸惑うばかりの樹だったが、やがて生きにくい現実にぶち当たるたびに、日記のなかに逃げ込み、日記のなかで生き延び、現実にあらがう術を身に着けていく。
そう、無力なイツキが、架空日記のなかでは、イッツキーにもなり、ニッキにもなり、イスキにもなり、タスキにもなり、さまざまな生を生き得るのだ。
より一層と酷薄さを増していく現実世界こそを、著者ならではのマジカルな言葉の力を駆使して「架空」に封じ込めようとする、文学的到達点。
内容説明
人間はいつどこで意思と対話を捨ててしまったのか?刻々と分断の進む世界の60年を、丸ごと書き換える試み。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
169
星野 智幸は、新作中心に読んでいる作家です。 1976-2016 40年間のクロニクル、フェイク日記文学、著者と同い年なので、社会・風俗・世相は良くわかりますが、新聞小説のせいか冗長、ひとでなしと言うほど悪くもなく、メリハリがありませんでした。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639188462024/10/30
ソングライン
15
1965年生まれの鬼村樹は小学校の担任セミ先生から嫌な気持ちを閉じ込める方法として架空日記を書くことを勧められます。ホモセクシャルであることに悩み始めサッカーに目覚める中学生時代、かけがえのない友人を得え性の誘惑に身もだえた大学生時代、そして社会人となりペルー文化を広める活動に没頭する、その間も別の選択をした設定の架空日記は続いていきます。自分の存在を素直に認められずも続いていく生、人の一生とはこんなものなのではないかと考えさせられる物語でした。2025/02/27
harumi
14
630ページという分厚さに一瞬怯んだが新聞連載小説と知ってなぜか気が楽になりなんとか読み終えた。主人公のイツキが小学生から中年になるまでの物語。同世代なのでこの間に起こった出来事はよく理解できる。問題は彼がLGBTQだということ。LGBTQが世間に認知されたのはここ数年?だからイツキの生き辛さは相当なものだったと思う。でも彼は天才的なコミュニケーション力で実に上手く自分の居場所を見つけ広げる旅を続けていく。言い方は良くないけれど世渡り上手で何をやっても上手く行く人(本人は全く自覚がない)だと思った。2025/01/24
海星梨
13
最近ジェンダーと生きづらさを扱った小説、『正欲』『歌われなかった海賊たち』に、イライラモヤモヤしていたのを全て払拭してくれた。県の名前も違うし、消費税は売買税だし、オウム真理教と9.11は回避され、東日本とコロナは起こる、つかれ離れずのパラレルが不思議。性別も性的指向も何者かもわからないし言葉にしなくていいし、それでも生きていけるところで生きていかせて。共感しかない。政治も国際も充実に書いててすごー。ロシア侵攻で終わるのは、まだまだ続くけど今はここまでしか書けない日記である、ってことだろうな。2025/04/24
メルコ
10
1965年に生まれたイツキの人生を追いながら人生に関わった人達を描く。大学卒業後新聞記者になったり、著者の人生とシンクロするところもあるなと思うが単に自伝的という話ではない。話題は政治、サッカー、LGBTQ、移民など多方面にわたり様々な考察をされる。東日本大震災やロシアのウクライナ侵攻なども主人公の人生に関わってくるが、現実のパラレルワールドのように少し歪んで描かれる。主人公は現実世界と並行して現実と似通った架空日記をたびたび書いていて、それが小説を超えて現実と相通じるところもあり奇妙な感覚に陥る。2025/11/20
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