出版社内容情報
第170回芥川賞候補作。32歳のピアノ講師・田口琴音は、さいきん仕事も恋人との関係もうまく行っていない。そんな中、ひさびさに連絡をとった友人との再会から、事態は思わぬ方向へ転がっていくーー。静かな日常の中にひそむ「静かな崖っぷち」を描き、心ゆすぶる表題作。そして選考委員の絶賛を浴びた文學界新人賞受賞作「アキちゃん」を併録。
「すべての結果としてこの作品は、新人離れした堂々たる手腕を示すことになった」(川上未映子氏の選評より)
内容説明
32歳、琴音の「静かな崖っぷち」新鋭作家が奏でる、おかしさに彩られた哀しみの夜想曲。第170回芥川賞候補作。
著者等紹介
三木三奈[ミキミナ]
1991年生まれ。2020年、「アキちゃん」で第一二五回文學界新人賞を受賞しデビュー(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
216
第170回芥川賞候補作・受賞作第四弾(4/5)、初ノミネート正に新人、三木 三奈、初読です。才能は感じられますが、第167回受賞作「おいしいごはんが食べられますように」に似た不穏な感じのため、受賞はなかったのかも知れません。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639181292024/02/21
fwhd8325
120
表題作と「アキちゃん」の2編収録。両作品とも面白く読みました。2つの作品に共通する感情の波は、私自身にも覚えがあるような、嫌な感情でした。あらためて言うことはないけれど、小説は本当に面白い。そして作家先生は凄いと思いました。2024/02/26
シナモン
104
文學界2023年10月号で読了。会話で埋め尽くされた文章にリアリティを感じた。とどまることを知らない不安定さや危うさ。読みやすくてあっという間に読了だったけどその不穏なパワーにどこかやり切れなさを感じる一冊でした。2023/12/24
ひめか*
86
ピアノの表紙に惹かれて読んだものの、文体が合わなくてずっと平坦で面白さを感じられなかった…表題作はほぼ描写がなく、会話のやりとりが長めに続く。女性って態度が変わって怖いし面倒くさいね。生徒さんの母も友達も自身も、女同士のやりとりは読んでいてうんざり。恋人とうまくいかない、仕事も苦しいことある、選んだプレゼントが既に持っていたものだった、いろんな嫌なことが重なって気分が沈む。「アキちゃん」は憎き嫌な友達のことを描いている。こんな子いたらすぐ離れたいね…好きな子に嫌がらせするタイプの人は前から苦手だったな。2024/07/10
花ママ
64
第170回芥川賞候補作。32歳のピアノ講師琴音。会社を辞めて、親に家賃を出してもらう暮らし。ピアノ講師だが、ピアニストの技量はない。友人との関わりも自分本位にしか見えず、ここまで人物の生の姿を描くのかと。文学界新人賞を受賞した「アキちゃん」も複雑な人間関係や、小学生特有のカースト制がシビアに描かれていた。2024/03/03