出版社内容情報
仰げば彼方は鏡のようにある。記憶になかったことばかり思われる。――「ラサンドーハ手稿」
蜃気楼のように現れる塔。ざぶんざぶんと波の音。へそから出てくるうなぎたち。母がクリーニング店に預けたもの。画家が描く瓜二つの妹たち。ある日、人類に備わった特殊能力……
九人の実力派作家が紡ぐ幻想アンソロジー。
【目次】
ラサンドーハ手稿 高原英理
串 マーサ・ナカムラ
うなぎ 大木芙沙子
マルギット・Kの鏡像 石沢麻依
茶会 沼田真佑
いぬ 坂崎かおる
開花 大濱普美子
ニトロシンドローム 吉村萬壱
天の岩戸ごっこ 谷崎由依
内容説明
水路の鐘が鳴り、時間は静かに途絶える―九人九色の幻想譚。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ひさか
30
文學界2023年5月号特集12人の“幻想”短篇競作から、9つの短編を収録して2023年9月文藝春秋刊。それぞれの作家さんの構築した多彩な幻想世界。いくつかは、機会をあらためて別なところで世界の広がりが語られるのではないかと思わせるような難解さと半端感を感じます。と思うと、このあとにどんな世界が広がるかが楽しみになります。そしてそれは作家さんを追いかけるということと等しいのかもしれません。2023/11/18
あじ
20
毎年生まれる女人形を人柱として祠に祀る【串/マーサ・ナカムラ】は、残忍な行為でありながら“継続”を心密やかに願ってしまう事実の裏付けに、承認判を押してしまう。また臍からうなぎが出てくる【うなぎ/大木芙沙子】は、少年時代の思い出が絡む悔悟を描く。どの短編も表層の下に眠る飽くなき幻想を抱かせる。◆純文学好みの方に。2024/06/29
沙羅双樹
15
「幻想」という名の下に集った才気溢れる作家たちによるアンソロジー。作家によって「幻想」という概念の解釈が異なっているところが面白かった。乾いた大地を幻の雨で濡らすような文体が集っている。個人的に好みだったのは、高原英理『ラサンドーハ手稿』と石沢麻依『マルギット・Kの鏡像』。特に後者は一推しの作家なので、楽しみに待っていた新作を堪能することができた。尚、こういった企画は幻想文学の土壌が深耕されていない日本において、非常に貴重なものだと思う。2023/09/25
ハルト
11
読了:◎ 高原英理「ラサンドーハ手稿」、マーサ・ナカムラ「串」、坂崎かおる「いぬ」が特に印象に残った。▼幻想短編集ということで、どれもが非日常のあわいを描いている。人身御供の人形が生まれてきて、それを供物として捧げたり、架空のいぬを飼うという奇矯な行為を母が始めてしまったりと、空想的世界が繰り広げられる。「天の岩戸ごっこ」の持つ神話と子供の親和性だったりも記憶に残る。薄くはあるけれど、豪華なメンバーで満足のいく本だった。2024/07/08
ともりぶ
4
『串』と『天の岩戸ごっこ』が好み。2024/10/05