出版社内容情報
北関東というのは独特の匂いのする地域である。
大宅賞作家・安田峰俊の最新作は、その北関東に地下茎のごとく張り巡らされた、「移民」たちのネットワークのルポだ。
移民に「」がつくのは、日本には制度上、移民はいないから。しかし、悪名高い、技能実習生制度のもと、ベトナム人だけでも実習生は20万人近く。その一部は低賃金や劣悪な環境に嫌気がさして逃亡、不法滞在者の「移民」として日本のアンダーグラウンドを形成している。彼らは自国の経済が発展し、出稼ぎに出なくても食えるようになると、日本になど来なくなる。そのため、アンダーグラウンドの主役はどんどん変わる。かつて中国人が主役だったアンダーグラウンドを、今、占拠しているのは、無軌道なベトナム人の若者たちなのだ。
ベトナム人によるアンダーグラウンド社会が日本人に知られたのは、群馬県で起きた「豚窃盗事件」。養豚場から盗まれた豚は、彼らのアパートで解体され、彼らのネットワークの中だけで処理されたため、警察の捜査は難航した。このように、アンダーグラウンドで完結する犯罪は表に出にくいのである。桃などの果物も、かなり派手に盗まれているが、犯人はなかなか逮捕されない。
本作では、筆者と通訳の「チーくん」(彼は日本育ちのベトナム難民の2世だ)が、まるでホームズとワトソンのように、「移民」による事件現場を訪ね歩く。血なまぐさい殺人現場、タトゥーだらけのしたたかな不法滞在者たち、常にただよう薬物とバクチと女のニオイ。あちこち探り歩いて、ついに北関東ベトナム人アンダーグラウンドのボス、「群馬の兄貴」にたどり着く。スキンヘッドに気合の入った刺青、見るからに恐ろしい「群馬の兄貴」が犯した真の罪とは……。
豚の窃盗から、誘拐、殺人と、あらゆる犯罪現場に、ベトナム人の好物である雷魚とアヒル、そしてビールを手土産に走り回る2人。
恐ろしくて面白い、アンダーグラウンドレポート!
内容説明
ベトナムから技能実習生として来日したが、さまざまな理由で職場から逃亡し、アンダーグラウンドの住人となった自称「ボドイ(兵士)」たち。北関東に地下茎のように張り巡らされた彼らのネットワークに注目し、その隠れ家に突撃すること20回以上!通訳のチー君、カメラマンの郡山総一郎と筆者の突貫トリオは、大量のビール、米、時にはアヒルやライギョを手土産に、今日もボドイの事件を追いかける!
目次
序章 「兵士」を自称するやんちゃなベトナム人
第1章 無免許運転でひき逃げ死亡事故
第2章 嫌われ娘・ジエウが暮らした漁村
第3章 シャブ・刺青・おっぱい―ウーバーイーツ配達青年の青春
第4章 豚窃盗疑惑「群馬の兄貴」と会った!
第5章 「日暮里のユキ」が見た日本人の性と老
第6章 殺し合うボドイたち
第7章 列車衝突事故でもほぼおとがめなし
第8章 桃窃盗事件の裏にあるボドイ経済
著者等紹介
安田峰俊[ヤスダミネトシ]
1982年、滋賀県生まれ。広島大学大学院文学研究科博士課程前期修了(中国近現代史)。ルポライター。立命館大学人文科学研究所客員協力研究員。中国およびアジア世界を主なフィールドとし、『八九六四「天安門事件」は再び起きるか』(KADOKAWA)が第5回城山三郎賞と第50回大宅壮一ノンフィクション賞、『「低度」外国人材移民焼き畑国家、日本』(同)が第5回及川眠子賞をそれぞれ受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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