出版社内容情報
第100回オール讀物新人賞を満場一致で受賞した著者が、満を持して送り出す初の作品集。
選考委員の村山由佳氏が”読み終えるなり「参りました」と呟いていた”と選評に記した受賞作「をりをり よみ耽り」の世界を5篇の連作で展開する。
物語の舞台は、文化年間の江戸浅草。女手ひとつで貸本屋を営む〈おせん〉の奮闘を描く。盛りに向かう読本文化の豊饒さは本好きなら時代を超えて魅了されることでしょうし、読本をめぐって身にふりかかる事件の数々に立ち向かう〈おせん〉の捕物帖もスリルに富んでいます。
第99回オール読物新人賞受賞作、由原かのん『首ざむらい 世にも怪奇な江戸物語』も同時発売。
内容説明
文化期の浅草。天涯孤独のおせんは今日も高荷を背負って、江戸中を振り売りして歩く。時に幕府の狗に目をつけられ、板木泥棒、幽霊騒ぎ、幻の書物探し…さまざまな事件に巻き込まれながらも、おせんは退かない。すべては本を読み手に届けるため。第100回オール讀物新人賞受賞作。
著者等紹介
高瀬乃一[タカセノイチ]
1973年愛知県生まれ。名古屋女子大学短期大学部卒。2020年「をりをり よみ耽り」(本書所収)で第一〇〇回オール讀物新人賞を受賞してデビュー。本書が初の単行本となる(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
夢追人009
327
オール読物新人賞受賞作を含む全5編の連作短編集。重い荷物を背負って江戸浅草の町で客先を訪問して回る女貸本屋おせんは父を亡くした若い娘で天涯孤独の身ながら孤軍奮闘します。近所の青菜売りの登は何かにつけて助けてくれて「嫁にこないか」と言ってくれても無視して応じぬ強情な性格なのですね。本作にはミステリ要素もありますが、女主人公の負けず嫌いの心意気を前面に出したハードボイルド調と江戸の下町人情を絡ませた活きのいい物語ですね。本物の悪党にも負けない向こう意気の強さが魅力的で素晴らしく、彼女をずっと応援したいですね。2023/07/14
鉄之助
305
「満場一致での”オール讀物新人賞”受賞後、初の小説集刊行」と出版元の文藝春秋も力を入れる。著者は航空自衛隊の元・女性自衛官だったが、入隊試験を受ける際、防衛省に直接電話をかけて問い合わせをしたというエピソードを持つ、根っからの「体当たり取材派」。だから彼女の時代小説は、江戸の風、空気が感じられる。当時の「貸本屋」の仕組みも、とことん調べ、プロットも完ぺきに仕上げないと書き始めないのだという。各話ミステリー仕立てなのも秀逸。特に艶話「幽霊騒ぎ」が気に入った。2023/11/01
KAZOO
201
江戸時代の貸本屋の話で5つの連作短編集です。この作家さんは初めてですが、嫌みがあまりなく、主人公の女性も比較的カラっとしている感じでした。当時の貸本屋という商売がどのようなものかよくわかりました。今のような情報過多の時代ではなく、楽しみが少なかった耳朶には結構重宝なものであったに違いありません。続きを読みたい気にさせてくれます。2024/02/06
ねこ
171
江戸時代に貸本屋。そして主人公は女性のおせん。誰も手がつけられていない題材を取り扱った斬新な視点であると驚きました。江戸時代の識字率どの程度だったのだろうか?と興味も湧いてきます。そして書物はかなり高価。故に写本を貸し出しての商売が江戸界隈で八百件。なるほど。錦絵は誰でも楽しめるし噂になれば見てみたいだろうと想像が膨らみます。江戸時代の粋なやり取りとテンポのいい内容とちょっと下世話なやり取り。江戸の空気感が楽しめました。あと、表紙の絵可愛くていい。…でもこのサイズに本いっぱいだとメッチャ重いと思います!2023/05/07
fwhd8325
144
とても面白い作品でした。小説を読んでいるとき、映像化したら誰が適役かなと考えることがあります。この物語の主人公、おせんは誰がいいかなとずっと考えていましたが、読み終えてもイメージが浮かびませんでした。それだけ、この主人公は新鮮でした。シリーズ化されてもおかしくない内容なので、これからが楽しみです。2023/03/25
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