出版社内容情報
短歌界で最も輝かしい存在である大森静佳の歌はあらゆる人を魅了してやまない。「カミーユ」に続く第三歌集がいよいよ届く。
内容説明
『カミーユ』から4年、最も待たれていた歌人の第3歌集。いまと遥な時間がここにつながる。
目次
1(血ののぼる頬;阿修羅;やがて花束 ほか)
2(空洞;光らない)
3(木乃伊;わがままな翅;赤い ほか)
著者等紹介
大森静佳[オオモリシズカ]
1989年、岡山県生まれ。2010年に第56回角川短歌賞を受賞。「塔」短歌会所属(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
278
「カミーユ』に続く第3歌集。前作に比べると難解さの度合いを増している。それは、それぞれの歌の歌としての自立度が高いがゆえに、共感性の範疇に入り込むのが容易ではないからではないか。表題歌「さびしさの単位はいまもヘクタール葱あおあおと風に吹かれて」ーヘクタールは隠喩だろうが、これなどはまだ共感覚が持てそうなのだが、では直喩はどうか。直喩も結構たくさんあるのだが、例えば「雨夜に聴くオーボエの音、皮膚と骨とがみっちり癒着しているような」。歌集全体はメタファーに満ち満ちているように見える。その海に⇒2025/03/30
とよぽん
62
言葉の芸術。図書館の新着本コーナーで。タイトルも表紙も手にとって! と誘ってくる。大森静佳さんを知らなかったけれど、この第3歌集を読み、深くて大きな衝撃を感じた。まだ30代の歌人で、こんなに鋭い感性と卓越した想像力を短歌にぶつけてくるとは!2022/09/20
あや
35
やっと読めた大森静佳さんの第三歌集。銭湯を詠んだ歌に心惹かれた。前作前々作も好きだけれどこの歌集も心惹かれる歌が多い。 ざっくりと角度をつけてひとを恋う柿の葉寿司の葉っぱも食べて/横顔に帆のような影さしながら愛には種類があるなどと言う/夢でなら何度も死んだことがある白夜のシーツに指を裂きつつ/地下駅に雪の気配が降りてくる舌は怒りに痺れたままで/赤いからだを皮膚で覆って生きている銭湯にいるだれもだれもが 大森さんは岡山のご出身なので勝手に親近感を抱いております。2023/06/05
ちぇけら
19
愛されたひとの裸を抱く夜にさびしさのぶん乳房潰れり。なんて。わたしを抱くあなたの肌はとても白くて釘を打ちつけてみたかった。10月はカーテンの向こうで赤く照っていて、あなたの肌はそれをそのまま赤く反射させている。まるであなたが生きているみたいに。夜になって朝が来て、あなたが決して言わなかった言葉を聴いていた。〈決してぼくより先に死なないでおくれよ〉〈きみの心臓の音を聞いて眠りたいな、あるいは、雪の音を〉〈眠りなさい。ぼくはいつだってきみの夢のなかにいるから〉ねえ、あなたが死んだら、誰がわたしの髪を撫でるの?2022/10/23
だいだい(橙)
18
大森さんの第三歌集。第二歌集「カミーユ」が秀逸のできだったので、この第三歌集への期待は大きかったはず。「カミーユ」の場合は歴史上あるいは物語作中の女性に託して詠まれた歌が多かったが、この歌集ではより自分に向き合った作品の割合が大きいのでは?という印象。ハイライトは源氏物語へのオマージュである「光らない」ではないか。オマージュとはいえ、ここには一人称の文学があるように思えた。大森静佳の前に大森静佳はなく、大森静佳の後に大森静佳はない、と言いたくなるような圧倒的な存在感に耽溺した。ひたすら脱帽、感動。2022/07/31