出版社内容情報
腹が破裂して、死にますよと言われた。三度の入院、飼猫の手術、コロナ――痛みは私を歴史や宇宙の謎へ導いていく。著者渾身の一作。
内容説明
腹が破裂して、緊急手術をすることになった。そこから連鎖するように、わたしのからだに不調が現れる。やがて世界には新型コロナウイルスが蔓延し始めた。からだの痛みは、苦しみの歴史や数多の物語、宇宙の謎にまでわたしを導いていく。恐るべき速度で世界が変化する分断と混乱の時代に、あらゆる束縛を小説で超越してきた山下澄人が投げかける、渾身の一冊。
著者等紹介
山下澄人[ヤマシタスミト]
1966年、兵庫県生まれ。富良野塾二期生。96年より劇団FICTIONを主宰。2012年『緑のさる』で野間文芸新人賞を、17年「しんせかい」で芥川賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
starbro
189
山下 澄人、3作目です。病と死の私小説的連作短編集、著者と同世代なので、しっくり来ますが、一般的には受けないでしょうね。売れない芥川賞作家です。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639152582022/05/15
ケイ
115
自身や受けた手術にまつわる話が根底にあり、構成する短編は内容が重なって、せん妄の中で繰り返し脳内で流れる映像に引き込まれていった感覚。3年前に祖母が大腿骨頸部骨折のオペ後、麻酔の影響で起こるせん妄に対処するために数夜付き添ったのだが、その時は80代くらいの男性と相部屋だった。彼がせん妄状態で話すうわ言で眠れなかった。何度も繰り返される火事の起こる様、呼ばれる息子の名前、何とかしようと焦ってかける言葉たち。この本を読んでいる間、その人のせん妄がずっと鮮やかに蘇っていた。ここにあるのは作者が呟くうわ言。2022/08/01
Book Lover Mr.Garakuta
17
【図書館】【速読】:この本は、少し難しいものを感じたままの状態で、それをずるずると引きずったまま、読了。感じ得るものはあったけど。果たしてそれがどうなのかなと思いもしたし、ゲーム的な表現も、含まれてるかもと感じさせられた一冊だった。何かに悩んでいる人が読んだら余計に悩まされそうな感もしたが、それは自分だけだろうと思う。まあ読み物としては普通に面白かったけどとらえ方次第でどうにでもなると思う内容である。2022/06/27
そのとき
11
年老いて、病んで、ままならなくなる。人も動物も。生きて死ぬまでの間に、誰かと何かとひと塊になって生きる時代がある。ひと塊になって初めて、自分はひとりじゃないと気がつくようだけれど、実はもう最初からみんな塊。最初からみんな、山。山っていうのは、太古からの自然の一部というか、変わらないものというか、生物の結集のような表現なのだと思う。相変わらず読みにくい文体だけれど、嫌じゃないし、最後数ページが本当面白い。2022/05/06
ぽち
7
西村賢太追悼特集が編まれていた文學界2022年7月号がやっぱり読みたくなって相場よりだいぶ安くで購入できた、そこに山下さんと美学者の伊藤亜紗さんの対談が掲載されていた、山下さんが大きな病気を重ねて患った経験を小説にしていたのを知った、本書は発行されてすぐ購入したのだけど積読したままだったのだけどそういう経緯で読んで、ものすごくおもしろい。病の経験からを書いた連作集で、なんだこれは私小説じゃないか!山下澄人のわたくし小説!と驚いたのだけどこの次に読んでいる(今)山下さんの新刊の「FICTION」には2024/03/31