出版社内容情報
「小説なんて現実世界の敵」と断じる社会派YouTuberの14歳の娘。しかし彼女の最新投稿は太宰治の「女生徒」について――?
内容説明
社会派YouTuberとしての活動に夢中な14歳の娘は、私のことを「小説に思考を侵されたかわいそうな女」だと思っている。そんな娘の最新投稿は、なぜか太宰治の「女生徒」について―?第166回芥川賞候補作。
著者等紹介
九段理江[クダンリエ]
1990年、埼玉県生まれ。2021年「悪い音楽」で第一二六回文學界新人賞を受賞。受賞第一作となる「Schoolgirl」は第一六六回芥川賞の候補作に選出された(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
280
第166回芥川賞受賞作&候補作第三弾(3/5)です。九段 理江、初読です。芥川賞候補作&第126回文學界新人賞受賞作「悪い音楽」、Wメインの本作、現代の悩める女性達の感性を瑞々しく描いており、興味深く読みました。これまでの芥川賞候補作の中ではMyBestですが、芥川賞受賞作「推し、燃ゆ」に雰囲気が似ているため、受賞に至らなかったのかも知れません。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/97841639150812022/02/19
ネギっ子gen
113
2編収録。まず、文學界新人賞受賞作「悪い音楽」を読む。面白い。文章のテンポが。こうした書き方好きだなぁ。続いては、芥川賞候補になった表題作。太宰治の「女生徒」が出てくるあたりから面白くなる。社会派YouTuber活動に夢中な14歳の娘は、母親のことを「小説に思考を侵された可哀想な女」と思ってた。って話で、感興を覚えたんだけど、読んでて高揚感が出てこない。的な……。どうして? と考察するに、題名です。この題名なのに、主に母親目線で語られるし。何より! 太宰の『女生徒』のような文体を、期待しちゃってて。ね。⇒2022/08/01
アキ
97
「東京都同情塔」で芥川賞をとった著者のデビュー作「悪い音楽」と表題作「School girl」の2篇。前者で第126回文學会新人賞、表題作で第73回芸術選奨新人賞を受賞している。つまり彼女の書く小説全て受賞作品となる。読んでみて、確かに現代より先を行く感覚と音楽や芸術、文学の扱いが洗練されているが、今回の作品であまり凄さは感じなかった。どちらの小説でも共通しているのは、少女と大人の女性との考えと感情のすれ違いであり、感情の機微を捉えて表現するのが上手い作家だと思った。2024/06/12
いっち
95
主人公は、娘のために存在すると言っても過言でない母親。娘は14歳。YouTubeで「世界の悲惨な現状を知ってもらうこと」をコンセプトに発信している。夫は外資系企業で働き、娘はインターナショナルスクールに通う。世界の悲惨な現状を知ってもらうにしては、裕福すぎる家庭。娘は母親を馬鹿にしている。一方YouTubeでは「お母さんのことを考えてばかりいるんだろう」「お母さんだけが私にとって特別なのはどうしてだろう」という発言。母親は、娘の教育のために教育関係の本を読み漁ってきた。母も娘も痛々しいが、どうも憎めない。2022/01/14
美紀ちゃん
93
芥川賞候補作なので読んでみた。 『Schoolgirl』と『悪い音楽』の2編。 AIが、料理のメニューの提案をしてくれるの、いいなぁ!と思う。 お母さん目線。 太宰治の『女生徒』再読したい。 お互いのその微妙な距離感が、うまく描かれているなぁと思った。 とても仲良しというわけではないのにお母さんのことをいつも考えてしまう。 本ばかり読んでいる空っぽな人と、娘はお母さんのことを言うが、自分が言われているような気持ちになってしまった。2022/02/17