出版社内容情報
女とは何か? 人はどうやって女になっていくのか?
岡山の片田舎に生まれた女の子が、性に目覚める。進学校に進み、京都の有名私立大学に進学。そこで男たちと次々に「共犯関係」を結んでいくが、同時に性の対象とされることにも息苦しさを感じていた。そこから逃れるために結婚をするが、それでも女という性から逃れることができず不倫にのめり込む。結局は離婚してしまい、ボロボロになり……。
女という性をやめられず、女という性から逃れられない「生」の先には何が見えるのか?
太宰治の『人間失格』を下敷きに、「女性が女性であることで覗きこむ深淵」を照らし出す意欲作。
内容説明
寂しさを消すことができるなら、私は死んでもいい。女が女になり、女でしかなくなる瞬間を描く問題作!
著者等紹介
小手鞠るい[コデマリルイ]
1956年、岡山県出身。81年第七回サンリオ「詩とメルヘン賞」を受賞し、三冊の詩集を上梓。93年『おとぎ話』で第十二回「海燕新人文学賞」を受賞し、作家デビュー。2005年『欲しいのは、あなただけ』で第十二回「島清恋愛文学賞」を受賞。09年原作を手がけた絵本『ルウとリンデン 旅とおるすばん』で「ボローニャ国際児童図書賞」を受賞。12年『心の森』が第五十八回青少年読書感想文コンクール小学校高学年の部の課題図書に選出される(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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starbro
216
書店で気になり、図書館に予約して読みました。小手鞠 るい、初読です。太宰治『人間失格』のオマージュ小説、自己肯定感の低い女性の物語でした。 https://books.bunshun.jp/ud/book/num/9784163914770 【読メエロ部】2022/01/17
fwhd8325
85
嫌な女性にも思えるし、悪い女のふりしたとっても可愛い女性にも燃える不思議な感覚です。「嫌われ松子の一生」がよぎりましたが、全く違う世界の女性なんでしょうね。難しいとは思わないけれど、感覚的にわからないことが多いようです。2022/03/05
そら
82
ひとりの女性の三章からなる手記。それは、写真と共に見つけられた手記だった。女という性と役割に目覚め始める幼少期、それを上手く利用しながら性を演じる青年期、妻という立場から一転、最期は使命感で人を包み込む。女性という生き物の、誰もが感じたことのあるややこしい感情、ただひたすらそのことを書き連ねたひとりの女性の物語。あとがきから「これはノンフィクションなのか?」と混乱する。葉湖はしあわせだったのだろうか?2022/01/22
ネギっ子gen
68
【家族そろっての食事の時間は、苦役以外の何物でもありませんでした/団欒という名の懲罰から解放されたい、そればかりを願って】 太宰治の『人間失格』を下敷きにしていると聞けば、そりゃ読むしかないよねぇ。良かった! ほんと、こういう文体が好き過ぎて。自意識過剰な“可愛いお嬢ちゃん”葉湖の物語を、3つの手記で。巻頭には、当然の如く『人間失格』の一節が掲げられ、その流れで本文を読むと、「その女の写真を三葉、見たことがある」で、小説の世界に――。うーん…『人間失格』読み直したい。何度目の再読になるのだろうか……。⇒ 2022/09/01
tenori
64
太宰治『人間失格』のオマージュ作品。「恥の多い生涯を送ってきました」で始まる第一から第三までの手記、「本当にマリア様みたいな優しい、いい子でした」との評価がある一方での破滅的な人生、主人公も葉蔵に対して葉湖。『人間失格』で描かれている男性を女性に入れ替えているだけとも言えるのだけれど、不可解で油断のならぬ(←太宰曰く)「女の性と生」が何とも奇妙な印象を残す。ジェンダーフリーの風潮に一石投じる感も。個人的には良い意味で問題作だと思う。カバーのない赤を基調にした装丁も強烈。2022/05/08